905 / 911
38 記憶 side 陸
15
しおりを挟む
「いっただきまーすっ」
風呂場から出た渡は、両手を勢いよく合わせるとテーブルに並べた朝飯を食べ始めた。
シャワーでスッキリしたのか、元気そうだ。
髪を乾かしているときから、腹の虫が煩かったからな。
あれもこれもと頬張り、満面の笑みで「美味しい」を連発。
出来れば、俺がサンマの身をほぐして薬味も好みに合わせてつけ、口まで運んで一口づつ食べさせてやりてぇくらいなんだが。
んなことしてたら、渡のカツカツな胃袋は干上がっちまう。
楽しみは、次回にとっとくか。
カフェテリアで、菊川とかなちゃんのやり取りを好意的にこいつは見てたしな。
断られはしねぇだろう。
白飯のおかわりのために、腰を上げて去っていく背中を眺める。
俺の分もと言ってくれたが、渡の食べっぷりに気持ちが先に満たされいつもより食べんのが遅れていたし断った。
もともとの量が違ってんのもあるが、まだ茶碗に半分以上残っている。
自分の作った飯を渡が美味そうに食べてんの見てると、牙が伸びて食いづらかったのもあんだけどな。
自分が用意した飯が、相手に咀嚼されて喉を通り内側へ入っていく。
それは、まるで自分自身が相手の身体の中に飲み込まれていくような感覚に近く、楔を打ち込み身体を交えてる感覚と似過ぎて厄介なんてもんじゃねぇ。
渡の開いた口に突っ込んでるような錯覚に襲われ、さっきから甘勃ちなんてレベルを超えている。
これをラブレターに例えた千里さんは、まだまだ俺達のことをわかってねぇ。
渡は食べることに集中してるから、並んで食ってても気付かれてる様子はねぇが、下を覗かれたら一発でバレる。
こんなん、節操がねぇあほとしか思われねぇよな・・・まぁ、番になれば隠しようがねぇし、バレることだが。
番持ちのΩは、発情期がなくなる代わりに相手の発情、ノットに応じてヒートになる。
下手すりゃ、つーか今のままじゃ、カフェテリアでノットになるぜ。
頭を冷やして見ることはできねぇもんかと、戻って来た渡の、飯を食べているその横顔をチラッと試しに見てみる。
口に運び、咀嚼し、飲み込む一連の動作。
下腹に籠もっていた熱が突き抜け、とっくに頭をもたげていたペニスが下着に阻まれ窮屈だとガンガン主張してくる。
思わず腰を曲げ、まだ料理が残っている皿に頭から突っ込むとこだった。
がーっ、爆ぜる手前の痛みが限界を超えこめかみまでズキズキ痛む。
俯いたままなんとか平静を取り戻そうとするがうまく行かねぇ。
持っていた箸が折れそうなくれぇ、持て余した力の置きどころに困る。
なんとか不審がってる渡に嗤って誤魔化し、もたもたと飯を再開。
あ"ー、コレが番になると渡にバレんだよなぁ。
酒の席で、親父や親戚連中がニヤニヤ子ども相手に話してたのを思い出す。
「番にしたいと思う相手に出会ったときは気をつけろよ。うっかり渡した食べ物を目の前で食われてみろ。無邪気に喜んでられずに、興奮がそっちに直結してヤバいヤバい」と盛り上がっていたっけ。
正に、その状態だな。
あんときの親父達を眺める千里さんの極寒の眼差しが怖くて、記憶にすげぇ刻まれてる。
生々しいこの感情がどうやったら収まるのか聞いときゃ良かった。
風呂場から出た渡は、両手を勢いよく合わせるとテーブルに並べた朝飯を食べ始めた。
シャワーでスッキリしたのか、元気そうだ。
髪を乾かしているときから、腹の虫が煩かったからな。
あれもこれもと頬張り、満面の笑みで「美味しい」を連発。
出来れば、俺がサンマの身をほぐして薬味も好みに合わせてつけ、口まで運んで一口づつ食べさせてやりてぇくらいなんだが。
んなことしてたら、渡のカツカツな胃袋は干上がっちまう。
楽しみは、次回にとっとくか。
カフェテリアで、菊川とかなちゃんのやり取りを好意的にこいつは見てたしな。
断られはしねぇだろう。
白飯のおかわりのために、腰を上げて去っていく背中を眺める。
俺の分もと言ってくれたが、渡の食べっぷりに気持ちが先に満たされいつもより食べんのが遅れていたし断った。
もともとの量が違ってんのもあるが、まだ茶碗に半分以上残っている。
自分の作った飯を渡が美味そうに食べてんの見てると、牙が伸びて食いづらかったのもあんだけどな。
自分が用意した飯が、相手に咀嚼されて喉を通り内側へ入っていく。
それは、まるで自分自身が相手の身体の中に飲み込まれていくような感覚に近く、楔を打ち込み身体を交えてる感覚と似過ぎて厄介なんてもんじゃねぇ。
渡の開いた口に突っ込んでるような錯覚に襲われ、さっきから甘勃ちなんてレベルを超えている。
これをラブレターに例えた千里さんは、まだまだ俺達のことをわかってねぇ。
渡は食べることに集中してるから、並んで食ってても気付かれてる様子はねぇが、下を覗かれたら一発でバレる。
こんなん、節操がねぇあほとしか思われねぇよな・・・まぁ、番になれば隠しようがねぇし、バレることだが。
番持ちのΩは、発情期がなくなる代わりに相手の発情、ノットに応じてヒートになる。
下手すりゃ、つーか今のままじゃ、カフェテリアでノットになるぜ。
頭を冷やして見ることはできねぇもんかと、戻って来た渡の、飯を食べているその横顔をチラッと試しに見てみる。
口に運び、咀嚼し、飲み込む一連の動作。
下腹に籠もっていた熱が突き抜け、とっくに頭をもたげていたペニスが下着に阻まれ窮屈だとガンガン主張してくる。
思わず腰を曲げ、まだ料理が残っている皿に頭から突っ込むとこだった。
がーっ、爆ぜる手前の痛みが限界を超えこめかみまでズキズキ痛む。
俯いたままなんとか平静を取り戻そうとするがうまく行かねぇ。
持っていた箸が折れそうなくれぇ、持て余した力の置きどころに困る。
なんとか不審がってる渡に嗤って誤魔化し、もたもたと飯を再開。
あ"ー、コレが番になると渡にバレんだよなぁ。
酒の席で、親父や親戚連中がニヤニヤ子ども相手に話してたのを思い出す。
「番にしたいと思う相手に出会ったときは気をつけろよ。うっかり渡した食べ物を目の前で食われてみろ。無邪気に喜んでられずに、興奮がそっちに直結してヤバいヤバい」と盛り上がっていたっけ。
正に、その状態だな。
あんときの親父達を眺める千里さんの極寒の眼差しが怖くて、記憶にすげぇ刻まれてる。
生々しいこの感情がどうやったら収まるのか聞いときゃ良かった。
0
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載


【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。



欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる