ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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37 牙 side 渡

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「あ、あの・・・」


汗ばんできた掌をギュッと固く握って、なんとかわかって貰いたいし、恐る恐る話しかけてみる。
陸の表情は両腕に隠れて見えへんけど、その下でピキピキ血管浮いてたらどうしよう。
拒んどいてしたいことさせてとか、えぇとこ取りな発言してゴメンナサイ、で済むやろか?


「お前は・・・なんでそうなるんだろーな?」


陸の掌の内側から漏れてきたんは、途方に暮れた声と吐息。
そこに怒気は欠片も感じられへん。
んん?
誤解はされてへんみたいやけど、理解もされてへんな、これは。
ここは、ちゃんと言わんとあかんとこやな。

よしっと気合を入れ直す。


「αのんて、βと全然ちゃうんやろ?
かなちゃんやみこちゃんには、生まれついてのΩも、基本βのまんま移行してる俺ともちゃうでとは聞ぃてるんやけど・・・って、あれやで?
見せ合いっことかはしてへんで?」


指の隙間から疑いの眼差しを向けられたし、慌てて否定。
小説の中では、αの逆でΩのんは小ぶりやて書いてた。
子どもを妊むことに特化したバース性やし、その辺は退化してるんやて。
けど、そんなんでかなちゃんやみこちゃんの見たいとかはないで?
陸、俺のことなんやと思てるんや。


「俺が見たり触ってみたいのは、陸のやからやで?
俺、陸のん入れられる側やん?
どんなんなんかなぁって、知りたくなるんは当たり前やん?」

「・・・当たり前、じゃねーわ。
このエロ天ッ」


陸は勢いよく身体を起こしたと思ったら、捲れてた掛け布団を掴んで俺の頭の上からすっぽり包んでな。
俺が前見えへんやんって抗議する間もなく、ベットに引き倒されてん。
ギシッとベットが軋んだけど、俺が落ちたんは陸の胸。
均等な硬さのある真っ平らなマットレスとは違う、陸の身体の上やった。

お、重いんちゃうん?
俺、退こうとしたんやけどな。
簀巻きにされた格好でホールドされて、身動き取れへん。
わわっ、やっぱり怒ってたん??


「ちょぉ、陸??」

「いーから、寝ろ。
今日は、寝とけ。
いや、寝るぞ」

「なんでなん?
まだ話の途中やんっ」

「これ以上話して、俺を浮かれさせんな、アホ」


んん?
怒ってるんやなくて、浮かれてるん?
ってことは、喜んでる・・・え、なんで?
そっちの方がわからへんのやけどぉっ
布団の中でジタバタして、なんとか顔は出せたんやけどな。
俺の肩と腰を布団ごと抱き寄せてる陸の手は、ちっとも緩まへん。


「陸、わからへんままはよぉ無いで。
ちゃんと話し合おうや。
俺が本気なんを、陸にわかってほしいねんてば」


俺、発情期までにしたいし寝てる場合やないねんっ
陸さえ良ければ、慣れる練習を今から始めたいくらいやねんっ
俺、こんなことでは諦めへんでって燃え滾った目で陸を見たんやけど。

熱情たっぷり含んだ瞳に返り討ち。
牙の覗いた唇に囁かれて撃沈した。


「学園祭のときの歌、子守唄代わりに歌ってやるから口と目を閉じてみ?」


そ、そ、そ、そんなんんんんんっっ、ずるいわあぁーーーーーっ
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