ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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37 牙 side 渡

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あー、うー
どないしよう・・・

恥ずかしいのと、軽蔑されて嫌われたかもしれへん怖さでブルブル身体が震えてしまう。
でも、ここまで来たら『計画』も一緒に言ってしもた方が一回で済む分傷が浅く済むかもしれへん。
俺、陸から身体を離してじゃぶじゃぶ水面を荒らしながらその場で正座。
それからギュッと両手を胸の前で組んで、急ぎの『計画』のことを打ち明けることにした。


「お、俺な。
陸にお願いがあんねんっ」


固まったまんまの陸は反応してくれへん。
目は俺を見てくれてるし、ちゃんと聞いてくれてると思うんやけど、やっぱり呆れてしもたんやろか。
うぅ、挫けてる場合やないでっ
今を逃したら、発情期が来る前に言えるかどうか怪しいもん。


「陸との初めて、を、覚えてたいねんっ」


か、肝心のとこ濁してしもたけど、ちゃんと伝わったかな?
不安がどんどん大きくなってくるから、それに負けんとこと思うとどうしても必要以上にグッと身体の全部に力が入る。
爪が手の甲に食い込んでも、力を上手く緩められへん。

初めて出会ったんも、初めて遊んだんも、初めて食べもんのやりとりしたんも、俺は全然覚えてへん。
昼間に陸に案内してもらったけど、なんにも思い出されへんかった。
せやからこそ、陸との初めてはちゃんと覚えておきたい。

菊川君の孕親の陽太さんも、お兄さんの番の遥馬さんも、かなちゃんも、みこちゃんも。
番になったときのことは、ぼんやりとしてて覚えてないって聞いてショックやってん。
発情期のΩがそうなったとき、αを受け入れることを重視し過ぎて記憶が飛んでしまうなんてあんまりや。
番持ちになったら記憶はほぼほぼ残るぞって、陽太さんにはなぐさめられたんやけどな。
陸との初めてをまた覚えてられへんのは嫌やった。

だから、四人にどうしたらえぇか相談して。
陽太さんが、発情期やなくてもαと結ばれるやり方に詳しかったからマンツーマンで口頭やけど教えて貰って。
それに必要なもんもプレゼントしてくれて。
陸に食堂で怒られるまでは、毎日やないけどこっそり家の風呂場で練習しててん。

俺の身体は、自覚がないだけで小さい頃にΩに変わってるからな。
ソコは、βに比べたら柔らかくなんのは早いらしいんやけど、初めは指一本でも怖い、痛いし、でもそれは覚えてられへんより全然たいしたことやなかったから頑張れた。
いつか陸の番になれるってなったら、発情期が来るまでに抱いて貰えるようにって、夏からこっそり頑張っててん。

流石に怒鳴られてしもたときは、そんな気持ちにはなれへんかったから随分サボってたんやけどな。
発情期が近いせいか、陸の家に居候さしてもらうようになってから試してみたとき、ヌルヌルのローションが無くても指一本ならすんなり入ってん。
しかも、中から指の動きを助けるみたいにな。
じんわり体液が滲み出して来て・・・うん、出てくるのは小説では読んでたけど実際に目にして触ったらな。
あぁ、俺ってほんまにΩやねんなぁって。
陸の番になれるんやなぁって。

だから。


「発情期が来る前に、陸としたいっ」


この決意は、一朝一夕の気持ちやない。
陸に、はしたないこと言うなって怒られるかもしれへんけど譲れへん。
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