858 / 911
36 牙 side 陸
11
しおりを挟む
本来この集落は、笹部一族が変異種Ωになった相手を閉じ込め、番にするために作られているんだと親父から聞かされている。
その中でも、番になる場として使用するこのロッジは特別だ。
長年利用することが無かったとはいえ、定期的にリフォームされ、平日は毎日管理人に掃除させている。
ここの目的が目的だけに、二人で洗い場に立つのも浴槽に入んのも余裕の広さ。
浴室の扉を開けると真っ先に目を奪われるのが、窓から広がる外の景色。
覗きの心配もねぇから、浴槽の向こう側にはでっかい窓が嵌められ外には森が広がっている。
もう少し時期が遅けりゃ、紅葉も見頃だったろうな。
日暮れ時、燃えるような太陽の光が代わりに辺りを真っ赤に染めていて、時と共に変化を魅せるここでしか見られない自然のアートは圧巻だ。
渡もそう感じたらしく、隣に立って「綺麗やな」と話しかけてくる。
歴代ここを使った二人の中に、こんなにのんびり外を眺めている人間なんていたんだろうか。
渡の側にいると、不意に泣きたくなる衝動に駆られる。
特にここはヤバイ。
熱くなる目頭を堪えながら、暫く色が変わる様子を並んで見ていた。
今日から使用すると伝えてあったのもあんだろうけど、浴槽も磨き上げられ洗面所にもアメニティが揃えられていた。
俺が水で簡単に洗い流している間に、渡は新品のシャンプーなんかを開封。
「めっちゃ良い臭い~」と楽しげに笑っていた。
けど、それ以上やることはない。
先に出ても良いのに、ソワソワとボトルの位置を何度も置き直していたが、流し終えた俺と目が合うと「ヘヘッ」と照れ笑いされた。
・・・なんだろ、この天使は。
なんでこんなに無防備に俺の前で笑ってるんだ?
俺のを見て、全く怯えてないのはどういうことだ?
絶対ひかれるとこっちは身構えてたのに、肩透かし。
これも頼子さんの教育が絡んでんのか?
いや、堅物千里さんが「αの膨張率はβでは考えられないほどだが、発情期のΩであればなんとかなるレベルだ」とか真顔で説明してるってことも考えられるな・・・
「???
どうしたん、陸?
終わったんやろ?
お湯張りしぃひんの?」
「んあ、そうだな」
立ったまま黙っていたら、渡が不思議そうに首を傾げていた。
よし、あったことだけ考えりゃ良いこと尽くしだ。
番避けもさっさと外してるし。
マックスサイズじゃねぇけど、普段と違うこのサイズを目の当たりにして拒否反応は無かったんだからな・・・で、いいんだよな?
渡が俺のΩとわかってから、トントン拍子に進み過ぎていることへの警戒。
こんなにうまく行くものかと、疑心暗鬼にもなるだろう。
これから先、でっかい落とし穴が幾つも控えてそうだ。
思い悩みながら、スイッチ一つで自動湯張り開始。
渡が使ってる間に、軽い夕飯の準備でもしとくか。
湯上がりは、冷茶か?
浴室から出てそのあたりを確認しようとしたんだが。
パサッ
なんの躊躇いもなく、目の前で下着ごとパンツを脱いだ渡に目眩。
ベトついて気持ち悪かったんだろうが、俺が出てから脱げよ。
危機感が無ぇにも程があるっ
さっきタンマと言い出した癖に、何考えてんだっ
見ないように視線を外し、その横を通り過ぎて出ていこうとしたんだが。
パシッと横から伸びてきた手に腕を捕まれ、勘弁してくれと頭を抱えたくなる。
なんでここで俺を止める必要があるんだっ、このアホ天使ッ
その中でも、番になる場として使用するこのロッジは特別だ。
長年利用することが無かったとはいえ、定期的にリフォームされ、平日は毎日管理人に掃除させている。
ここの目的が目的だけに、二人で洗い場に立つのも浴槽に入んのも余裕の広さ。
浴室の扉を開けると真っ先に目を奪われるのが、窓から広がる外の景色。
覗きの心配もねぇから、浴槽の向こう側にはでっかい窓が嵌められ外には森が広がっている。
もう少し時期が遅けりゃ、紅葉も見頃だったろうな。
日暮れ時、燃えるような太陽の光が代わりに辺りを真っ赤に染めていて、時と共に変化を魅せるここでしか見られない自然のアートは圧巻だ。
渡もそう感じたらしく、隣に立って「綺麗やな」と話しかけてくる。
歴代ここを使った二人の中に、こんなにのんびり外を眺めている人間なんていたんだろうか。
渡の側にいると、不意に泣きたくなる衝動に駆られる。
特にここはヤバイ。
熱くなる目頭を堪えながら、暫く色が変わる様子を並んで見ていた。
今日から使用すると伝えてあったのもあんだろうけど、浴槽も磨き上げられ洗面所にもアメニティが揃えられていた。
俺が水で簡単に洗い流している間に、渡は新品のシャンプーなんかを開封。
「めっちゃ良い臭い~」と楽しげに笑っていた。
けど、それ以上やることはない。
先に出ても良いのに、ソワソワとボトルの位置を何度も置き直していたが、流し終えた俺と目が合うと「ヘヘッ」と照れ笑いされた。
・・・なんだろ、この天使は。
なんでこんなに無防備に俺の前で笑ってるんだ?
俺のを見て、全く怯えてないのはどういうことだ?
絶対ひかれるとこっちは身構えてたのに、肩透かし。
これも頼子さんの教育が絡んでんのか?
いや、堅物千里さんが「αの膨張率はβでは考えられないほどだが、発情期のΩであればなんとかなるレベルだ」とか真顔で説明してるってことも考えられるな・・・
「???
どうしたん、陸?
終わったんやろ?
お湯張りしぃひんの?」
「んあ、そうだな」
立ったまま黙っていたら、渡が不思議そうに首を傾げていた。
よし、あったことだけ考えりゃ良いこと尽くしだ。
番避けもさっさと外してるし。
マックスサイズじゃねぇけど、普段と違うこのサイズを目の当たりにして拒否反応は無かったんだからな・・・で、いいんだよな?
渡が俺のΩとわかってから、トントン拍子に進み過ぎていることへの警戒。
こんなにうまく行くものかと、疑心暗鬼にもなるだろう。
これから先、でっかい落とし穴が幾つも控えてそうだ。
思い悩みながら、スイッチ一つで自動湯張り開始。
渡が使ってる間に、軽い夕飯の準備でもしとくか。
湯上がりは、冷茶か?
浴室から出てそのあたりを確認しようとしたんだが。
パサッ
なんの躊躇いもなく、目の前で下着ごとパンツを脱いだ渡に目眩。
ベトついて気持ち悪かったんだろうが、俺が出てから脱げよ。
危機感が無ぇにも程があるっ
さっきタンマと言い出した癖に、何考えてんだっ
見ないように視線を外し、その横を通り過ぎて出ていこうとしたんだが。
パシッと横から伸びてきた手に腕を捕まれ、勘弁してくれと頭を抱えたくなる。
なんでここで俺を止める必要があるんだっ、このアホ天使ッ
0
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。



欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点


偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる