ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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36 牙 side 陸

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渡が他のαのモノを見てる・・・まっ先に頭を過ぎったのは、例の一年α、桂木。
キャンキャン煩え目障りな野郎。
渡に一番近づいていたαは、アイツだ。
βとして生きて来たんだから女の経験は仕方ねぇと割り切れるが、男との経験は、しかもあのクソ生意気なαが相手だとしたらブチ切れるぞっっ

どういうことだとカッとなった頭で胸ぐらを掴みかけたが、「触ってもえぇ?」とかアホなことを言い出してるエロ天の、その好奇心にキラキラ輝く瞳に見上げられたら自然と力が抜けた。
さっきまで、俺の腕の中で悶てた色気がまるでねぇ。
自分とヤッた相手と比べているにしては、反応がおかしい。

そういうことじゃねぇのか・・・?

番になることで頭がいっぱいで、そっちにしか考えが行かなかったが。
αが同性βの前で裸になるのは、セックスよか他の可能性の方が遥かに高い。
桂木以外で同性βに惚れたαがいるなんて話、聞いたことねぇしな。
相手を変異種Ωに変えちまう俺達なら珍しいことじゃねぇが。

つーことは、だ。


「まさか、プール脇の更衣室で他人の股間をジロジロ覗いてたんじゃねぇよな?」

「なっ、なんちゅうこと言うねん!
そんなんするわけ無いやろ、アホ陸っ」


ムキになってんのが怪しい。
興味津々でコレをガン見していた渡を信用出来ねぇ。
水泳の授業で着替えるとき、俺が気付いてないだけで周りの股間を見てたんじゃねぇのか?
自分と他人の成長具合を気にしてとか、渡の場合なら恋愛小説の中のαをリアルに妄想するためとか。
そういや、桂木と休日に泳ぎに行ってたこともあるよな。
このアホ天、アイツにもこんな目を向けてたのか?


「わぁ、もぉ、なんなん?なんなん?
そんな目ぇで見てといてぇや!
冗談やなくて、ほんまに俺がそんなことすると思ってんの?」

「だったら、いつ見てんだよ」

「修学旅行のときっ
クラスでお風呂に入ったとき、芝浦君と柴田君と一緒やってん。
そやかて、ジロジロ見たわけや無いし、チラ見してたんともちゃうで?
二人とも堂々と入って来たし、芝浦君はそこでも皆と話したりしてて距離も近かったから見えてしもただけやもん」


口と目を尖らせる渡。
「俺のこと、なんやと思てるん」と眉間に皺まで寄っているが、迫力もねぇし本気で俺に疑れたとは思ってねぇようだ。
からかわれているとでも思ってんだろう。

修学旅行、そういや大浴場に入ったな。
俺もわざわざ隠して入らねぇし、格下に見られていたとしても気にしねぇな。


「そんときも、今みてぇに触りたいとか言ってねぇだろうな」

「言うわけ無いやんっっ、アホッ」


ソファーの上にあったクッションが飛んでくる。
俺はそれを避け、さっさと風呂場に逃げた。
冗談混じりに話を終わらせたが、渡のことになると本当に余裕がねぇなと苦笑い。
特に桂木。
一瞬で沸いた強烈な嫉妬と怒りは、誤解だとわかってもまだ腹の底に種火がプスプスと燻っている。
渡に対してバツがわりぃ。
反省がてら一人で風呂の用意をして頭を冷やそうと思ったんだが、直ぐに渡が追い掛けてきた。
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