ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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36 牙 side 陸

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思わず、直に触れようと服の下へ滑り込みそうになった指をどうにか留める。
逸る気持ちごと、ゴクリと溢れてくる生唾を飲み込んで自分に強く言い聞かせた。

くそっ、落ち着け、落ち着けっ
ここまで受け入れられたことが奇跡なんだぞ。
徐々に慣らさねぇと、台無しになんぞ。
調子に乗って怖がらせちまったらどうすんだよっ
俺は、ギシギシ限界まで伸びた牙を噛み合わせ、再び焼ききれそうな理性の糸を手繰り寄せる。

この時点で、俺の下半身は熱を帯びるどころかパンツを突き破るくれぇに張り出している。
ここで油断したら、今度こそ最後まで止まらねぇだろう。
キスで簡単に飛んじまったんだから、その自覚はある。

掌で扱くのも余裕な小振りの渡に比べりゃ可愛さの欠片も持ち合わせねぇ欲望の兆しは、ドクドク心音に呼応するように滾り出口を求めて膨張している。
挿れたいのは山々だが、こんなん勢いに任せて突っ込むとか、ぜってぇしたくねぇ。

つーか、だ。

抑制剤を打っているから、渡の発情フェロモンに強引にαの性が引っ張られてるわけでもねぇのに・・・渡を一刻も早く自分のものにしたくてたまらねぇ。
この衝動は、発情フェロモンに惑わされないβの疑似体験みてぇなもんか。
さっさと剥いてコレを突っ込みてぇとか、α女子に相手させられた童貞んときよか切羽詰まってる。
情けねぇな。
が、そんだけ渡が俺にとっちゃ特別なんだと実感も出来る。

ここまで、ここまで違うもんなのか。
今まで寄ってきた女相手に、理性が飛ぶような醜態を晒したことは初体験含め一回も無かったんだぜ?
だから、抑制剤を打っときゃ大丈夫だろうと高を括ってたんだが・・・初っ端からこれとは、思ってたよりここで過ごすのはキツイな。

腰を引き、うっかり自分の倍はあるペニスを触れさせて怯えさせ無いよう慎重に体勢を整える。
クソッと頭を振って少しでも熱を散らそうとするが効果なんかねぇ。
渡には快感しか与えたくねぇのに、今すぐ抱きたいと牙が軋み、身体の中を熱が畝ってどんどん気持ちが昂ぶる一方だ。

まだ渡には本格的な発情期は来てねぇんだ。
俺を受け入れられるほど身体も解けねぇし、強行すれば傷付けて痛い思いをさせるだけ。
肝心の番にもならねぇって頭ではわかってんのに・・・

考え込んで自然と止まってしまった手。
焦れた渡が「もっと」と舌足らずに強請って腰を揺らす。

あ"ー、このエロ天めっ
なんにも躊躇がねぇのは喜ばしいことだが、惑わすほど積極的ってどういうこった!
それに応え、指の腹で擦ってやりながら、油断すると掴んで強い刺激で哭かせたくなる衝動に堪える。


「あ、んぅっ」


ビクビク腕の中で震え、眉を寄せて浅い息を吐く渡。
普段の屈託なく笑う姿とのギャップがヤベぇ。
どこに隠してたんだ、こんな顔っ
吸い寄せられるように赤く染まった頬を舐めて味見。
潤んだ瞳から溢れた涙も吸い、そこから首筋まで舌を這わせる。
今でコレなら、コイツの発情フェロモンを嗅いだ日にゃ俺はどうなんだろうかと不安になんな。

・・・この俺が、不安?

万一俺のΩを番にするチャンスが巡ってきたときのために、散々相手に合わせたセックスしかしてなかったってぇのに。
こんな渡を前に、今までの経験はどこまで通用するんだ?
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