ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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36 牙 side 陸

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深く、浅く。
何度も何度も繰り返し、互いの口に潜りあいながら溢れてくる唾液を夢中で飲み込んでいたらーーー渡の喉が鳴った。

コクン、と。

俺と渡の唾液が飲み込まれたその音に、受け入れられる喜びが増幅して一層興奮が高まる。
あぁ、俺のΩがこの腕の中にいるっっ
長年諦めてきた存在だけに、渡が男相手にどこまで本当に許せるのかと疑心暗鬼になっていたってぇのに。

試すためにわざと唾液を含ませても、渡は拒まずにまたコクンと飲み込んで応えてくれる、この現実。

昂ぶりすぎて、渡を気持ちよくさせるための動きが全く出来ねぇ。
勢いよく両肩を掴み、背後のソファーに押し倒していた。
どんなαを相手にしたときにも感じたことがなかった狂熱に、理性が焼き切れ自分のΩを貪ることしか考えられねぇ。
再び唇を奪いに行く俺を、渡は無抵抗のまま迎え入れた。





正気に返ったのは、力を完全に無くした渡の頭が背後のソファに肩ごと沈んで微塵も起き上がらなくなってから。
物足りねぇ、物足りねぇと離してやることが出来ず、あと少しを引き伸ばして堪能し過ぎていたらしい。

仕方ねぇなと渋々唇を離し、眼下の渡を見下ろす。
胸を上下させ、浅い息を繰り返すその目は、ボンヤリと宙を彷徨っていて心許ねえ。
開きっぱなしの濡れた唇を名残惜しいと舐めてから、腕の力も緩めて完全に開放。
自力でラグの上に座ることも出来ねぇくらい、俺の暴食は渡の限界を超えていたらしい。
ズリズリと下がっていく渡の身体は、ローテーブルの下にこのまま頭まで吸い込まれそうだった。
まぁ、ソファの真下では止まったんだかな。

目を潤ませ喘いでいる顔に余裕は全くねぇな。
酸欠・・・に、させちまってたのか?


「も・・・陸、やらしぃ」

「そりゃ、そうだろう」


辿々しく名前を呼ぶ声は、弱々しい。
なのに、もっと聞いていたくなるくらいに甘ったるくてエロい。
口の端から垂れてきたた涎を顔を寄せて吸ってやる。
血が混じってんな・・・牙で傷付けたか。

俺を食い入るように見上げた渡と目が合えば、ブルブル身体を震わせ「妄想しとったんより、やらし過ぎるぅ」とぽそぽそ呟かれた。

妄想・・・出来んのかよ。
俺と、お前で。

βとして生きてきてんなら、男同士ってだけでハードルはかなりたけぇ筈なのに。
マジで、天使だ。
しかも、エロい、エロ天。

予想外の嬉しさに、軽いキスを顔中に降り注いで耳朶にやんわり牙を食い込ませる。
全然牙が引っ込まねぇ。


「ん、ん、も、陸、休憩しよっ
これ以上は、頭がパンクしてまぅ~」


胸の前で手を組み、顔を真っ赤にして悶てる渡。
止めるじゃなく休憩か。
パンク、は、まぁ、ちけぇんじゃねぇか?
頭じゃなく、違う場所が、だろうけどな。

ローテーブルの下で、膝頭を擦り寄せモジモジしているのは俺から見えてるぜ?
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