ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
850 / 911
36 牙 side 陸

3

しおりを挟む
「り、陸、どうしたん?
俺、なんかしてしもた?」


俺の目に涙が浮かんでいることに気づいた渡は、オロオロしながら顔を覗こうとする。
俺は、目尻に溜まった涙を指で払い、なんでもねぇよと・・・うそぶくには、な。
オレンジジュースが残っているグラスをローテーブルに置いてから、心配してくれている渡に向き直り、ゆるゆる吐き出した息に静かに本音をのせた。


「ここに、一緒に来てくれて、ありがとうな」

「えぇ?!
そんなん、当たり前やんかぁ。
もぉー、急に何ごとやろうってビビってしもたぁ。
陸はいっぱい難しく考え過ぎやない?
そない真剣な顔で言われたら、俺が陸にめっちゃ凄いことしてあげてるみたいやんかっ
もぉ、照れるやんっっ」


俺の重たい空気を吹き飛ばすように、渡はあっけらかんと笑う。
ここは、俺がお前を変異種Ωにした地だってぇのに・・・番になるために一緒に来てくれているんだぜ?
こんなことが起きるなんて・・・凄すぎる、俺達一族にとっちゃ有り得ねぇことをしているなんて考え、これっぽっちもねぇんだろうな。

なんで、そんなに・・・

照れ隠しに背中か肩でも叩こうとしたんだろう。
俺に向かって伸びてきた右腕を堪らず捕らえ、そのまま引き寄せ唇を奪う。
身体は硬直しても、渡の驚いて見開かれた目には拒絶の色が欠片もなかった。

遠慮は、いらねぇんだよな?

手を腰に回し互いの胸を寄せると、躊躇いなく開いていた唇と歯の隙間に舌を捩じ込み、上顎の段差、歯列の裏面を一本一本確かめるように丁寧にじっくり舐め回す。
渡が鼻から息を吸おうしたタイミングで、後頭部を掌で支え、緩んだ口の中へ更に深く潜れる角度へ誘導。
覆い被さりながら舌を絡ませ、オレンジジュースの混じった唾液を吸い出し嚥下した。

あぁ、やべぇ。
コレが渡の味・・・喉元をトロリと落ちていく、まるで甘露みてぇだな。
もっと、もっと喰いてぇ。

ジュッジュッと続く生々しいその音に、渡が俺の腕の中でブルブルと体を震わせる。
けれど、逃げようとはせず、おずおずと俺の服を掴んで身を寄せてくる・・・あぁ、このまま、まるごと全部喰って自分のものにしてぇ。

頭を支えていた手を僅かに滑らせ、その滑らかな傷一つねぇ項を指でたどる。
ここに俺の印を刻み、渡が誰のものかを示してぇ。

俺に応えようとしてんのか。
渡の舌が、懸命に俺のに絡もうと動き、俺の口内におずおず入ってくる。
それを牙でやんわり甘噛みしてから受け入れ、もっと来いと強く吸い付いて絡み合わせた。

渡が俺に対して構えないよう、触れ合うだけの軽いキスしかして来なかったタガは完全に外れていた。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...