848 / 911
36 牙 side 陸
1
しおりを挟む
俺達の帰りを待ち構えていた株元に、あれもこれもと晩飯のお裾分けが入ったタッパを渡された。
俵型のおにぎりにきんぴら、おひたしに佃煮にバーベキューで残った焼いた肉と野菜・・・容器の大きさはバラバラだったが、その数は10を超えている。
どう見積もってもこの量じゃ、今日は渡に俺の料理を振る舞うのは諦めるしかねぇな。
渡はその場でいくつか蓋を開け、どれも美味しそうだと嬉しそうにしていた。
俺が食べさせたいってだけで、コレを後回しにすんのもなぁ。
ソファーとローテーブルの間に腰を下ろし、ちょこんと膝を曲げ座っている渡を振り返る。
渡は、ログハウスに帰ってくるなり、置きっぱなしだったスマホをカバンから取り出してラグに座ったまま動かねぇ。
表向きは、俺は家の都合、渡は急な検査入院で休むことにしてなっている。
心配した友達から連絡でも入ってんだろう。
画面に夢中になってる顔色に変化はねぇ。
発情期がすぐに来るようには見えねぇな。
まぁ、時間はまだあるんだ。
焦る必要はねぇと自分に言い聞かせる。
タッパを冷蔵庫の隙間に詰めたついでに、家から持ち込んでおいたオレンジジュースのペットボトルを取り出す。
クラスの学園祭打ち上げで貰ったヤツだ。
作り付け食器棚からグラスを一つ取り出して注ぐと、渡に近付いた。
「飲むか?」
「ひゃっ、あ、ありがとう」
俺に気付いてなかったらしく、驚いた渡はビクッと体を震わせた。
どんだけ集中してたんだ?
正直、俺としてはスマホなんざ目のつくとこに置いてほしくもねぇんだが。
どうやら顔にもそれが出たらしい。
渡は気まずそうにスマホをローテーブルに置いてからグラスを受け取った。
こんな顔させてる場合かよ。
「検査入院を心配して、連絡が来てんだろ?」
「うん、そやねん。
あ、でもな。
かなちゃんから、クラスの子に入院中は返信は出来ないだろうって言ってくれてん。
そやし、それを聞いたおんなじクラスやない子も返信不要やって言うのがほとんどやし、かなちゃんにはキリがないし、それにボロが出たらあかんから返したらあかんて言われてるねん。
やり取りしてるんは、かなちゃんやみこちゃんらと作ってるグループのんと、学年も部活も違うから事情がわからんくて心配してくれてた桂木君だけやで」
・・・桂木、ねぇ。
ドカッと渡の隣に腰を下ろした頭に、学園祭前に直接やりあった日のことや、当日渡と二人で食べ歩いていた光景が一気に蘇る。
渡がβだと知っても、なんの躊躇いもなく告白してきたα。
真正面から菊川の群れに接触してきて、渡への接近許可まで取り付けた。
もしも、先に渡がΩだと知られていたら・・・
「桂木君、めっちゃ心配して休憩時間にも昼休みにも電話くれててな。
昨日家に荷物の準備で帰ったときに、ちょっと話してん。
あ、でも、ほんまのことは話してへんで??」
渡は、空いた手で俺の眉間に触れてきた。
俵型のおにぎりにきんぴら、おひたしに佃煮にバーベキューで残った焼いた肉と野菜・・・容器の大きさはバラバラだったが、その数は10を超えている。
どう見積もってもこの量じゃ、今日は渡に俺の料理を振る舞うのは諦めるしかねぇな。
渡はその場でいくつか蓋を開け、どれも美味しそうだと嬉しそうにしていた。
俺が食べさせたいってだけで、コレを後回しにすんのもなぁ。
ソファーとローテーブルの間に腰を下ろし、ちょこんと膝を曲げ座っている渡を振り返る。
渡は、ログハウスに帰ってくるなり、置きっぱなしだったスマホをカバンから取り出してラグに座ったまま動かねぇ。
表向きは、俺は家の都合、渡は急な検査入院で休むことにしてなっている。
心配した友達から連絡でも入ってんだろう。
画面に夢中になってる顔色に変化はねぇ。
発情期がすぐに来るようには見えねぇな。
まぁ、時間はまだあるんだ。
焦る必要はねぇと自分に言い聞かせる。
タッパを冷蔵庫の隙間に詰めたついでに、家から持ち込んでおいたオレンジジュースのペットボトルを取り出す。
クラスの学園祭打ち上げで貰ったヤツだ。
作り付け食器棚からグラスを一つ取り出して注ぐと、渡に近付いた。
「飲むか?」
「ひゃっ、あ、ありがとう」
俺に気付いてなかったらしく、驚いた渡はビクッと体を震わせた。
どんだけ集中してたんだ?
正直、俺としてはスマホなんざ目のつくとこに置いてほしくもねぇんだが。
どうやら顔にもそれが出たらしい。
渡は気まずそうにスマホをローテーブルに置いてからグラスを受け取った。
こんな顔させてる場合かよ。
「検査入院を心配して、連絡が来てんだろ?」
「うん、そやねん。
あ、でもな。
かなちゃんから、クラスの子に入院中は返信は出来ないだろうって言ってくれてん。
そやし、それを聞いたおんなじクラスやない子も返信不要やって言うのがほとんどやし、かなちゃんにはキリがないし、それにボロが出たらあかんから返したらあかんて言われてるねん。
やり取りしてるんは、かなちゃんやみこちゃんらと作ってるグループのんと、学年も部活も違うから事情がわからんくて心配してくれてた桂木君だけやで」
・・・桂木、ねぇ。
ドカッと渡の隣に腰を下ろした頭に、学園祭前に直接やりあった日のことや、当日渡と二人で食べ歩いていた光景が一気に蘇る。
渡がβだと知っても、なんの躊躇いもなく告白してきたα。
真正面から菊川の群れに接触してきて、渡への接近許可まで取り付けた。
もしも、先に渡がΩだと知られていたら・・・
「桂木君、めっちゃ心配して休憩時間にも昼休みにも電話くれててな。
昨日家に荷物の準備で帰ったときに、ちょっと話してん。
あ、でも、ほんまのことは話してへんで??」
渡は、空いた手で俺の眉間に触れてきた。
0
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載



【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点


偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる