ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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35 準備 side 渡

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「俺、陸と一緒にここに来てんねんで?
無理強いなわけないやん」


本人が言ってんのに、陸は納得しきれへんようや。
その場から動こうとせぇへんから、腕を引っ張って株元さんがいる管理人の家に向かう。

フフッ
さっきは、陸にアホッて言われて酷いってスネたフリしたけどな。
実は、嬉しかったんが漏れてしもて口元がニヤけてまうわ。
俺がカッキーやってわかってから、陸、俺になんか遠慮してんのか怒ってくれへんなってな。
それが、他人行儀で寂しかってん。

いや、でもあれやで?
進んで怒られたいわけやないで?


「・・・なぁ、マジであのままで行くのかよ?」


めっちゃスローペースで歩く陸は、何度も遠くなってく番避けを振り返って俺のことをめっちゃ心配してくれてるのがわかる。
わかるけど、なんでこんなに信用して貰えへんのかこっちは不思議やわ。
それは、陸だけやなくて千里さんもやけどな。
俺が陸の番になれるの楽しみやって言っても、端から信じようとしてくれへんかったもん。
「恋愛小説に洗脳されてるのか?」って真面目な顔で言い出されたときは、ビックリした。
だって俺、変異種ΩやってわかってからしかΩの子の気持ちで読んだことなかったし、それまではえぇ話やなぁってのめり込んで泣くこともあってんけど、一人の登場人物に感情移入することはなかったもん。
なんて素敵な二人なんやろぉって、自分とは別世界として楽しんでたし。

まぁ、わかってからは完全にΩの子の気持ちで読み直したし。
男性αと男性Ωの恋愛小説は、完全に陸と俺に変換して妄想してたけどなっ


「もぉ、なんでそんな後ろ向きなん?
俺が陸の番になりたいんやで?」

「いや・・・それは、ありがたいんだけど、な」


歯切れの悪い陸。
足を止めて、正面から陸を見る。


「俺、ここで番にならんとうっかり他のαに噛まれてしもたら一生後悔する。
陸も、他のαが噛んだら赦さへんのやろ?」

「当たり前だ」


喰い気味に陸が断言してくれたから、破顔して応える。


「なら、話はシンプルやんか」


「この話はここで終わりっ」とさっさと切り上げて、陸の腕を改めて引っ張ったらさっきより軽なって歩きやすくなった。
陸、賢いからゴチャゴチャいろんなこと想定して考えすぎてるんちゃうやろか。
そっと伺ったら、渋い顔の陸と目が合う。
え、なんなん?
まだ俺の気持ち伝わってへんの?

でも、それは取り越し苦労やった。


「・・・だったら俺も、遠慮はいらねぇってことだよな?」


もぉ、やっとわかってくれたんっ
遠慮なんていらんよっ
俺は、嬉しくなって「もちろんやんっ」て言ったんやけど。

このあと、俺の感じてた遠慮と陸の考えてる遠慮が全然違ってたことを、俺は身を以て知ることになってん・・・
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