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35 準備 side 渡

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お昼の片付けが終わってから、これから陸と過ごすことになる家の案内を株元さんにしてもらうことになってんけどな。
株元さんが、家の中に鍵を取りに行ってる間に、鋼さんと千里さんから俺達は一緒に行けないからって言われてん。


「他の予定があるんですか?」

「いや、そういうわけでは無くてだな・・・」

「番相手と初めて巣に入るのに、いくら親でも他のαにいて欲しくねぇだろうって気を使ってんの」

「鋼っ、言い方っっ
息子がしでかしたことに対して、申し訳無いと思わないのか??
息子さんを番にされる道成さんの気持ちを少しは・・・」

「もぉ、ちーちゃんてばちーちゃんなんだからぁ。
言い方なんて変えても一緒だろ?
そんなとこに気を使ってどうすんだよ。
ちーちゃんなんて、今はもぅ関係無いのにさ。
居たたまれなくて一緒には行けねぇとか、ホント、気を使いすぎ。
胃に穴が開いちゃうぜ?」


ニッと口の端を上げて笑う鋼さん。
千里さんは、図星をつかれたみたいやわ。
眉を八の字に下げて胃のあたりを手で抑えて黙ってしもた。
陸も何も言わへんから、肯定ってことなんやろか。
鋼さんと千里さんのやり取りに、おずおずとおとんも声を上げた。


「・・・あの、私も行かないほうが良いのでしょうか?」

「あ、道成さんは大丈夫だから気にすんなって。
βだしな。
それに、息子が住むとこ、見ときたいだろ?」

「お前は、もっと気を使って話せないのかっ」


遠慮しようとしたおとんに、鋼さんは手を左右に振って笑いかけたんやけど。
おとんは、見られただけでビクッと身体が跳ねて冷や汗。
鋼さんの目が、お説教を始めた千里さんに移ってホッとしてた。


「おとん、大丈夫?」

「・・・まだ、慣れなくてね。
こういう時、よりちゃんが羨ましいよ」


ハハハ・・・と力無く笑うおとん。
おとん、同じαでも、陸相手やと普通に話せてんのに鋼さんやとあかんねんて。
職場も生活圏内もβばっかでαに慣れてへんし、見られるだけでどうしてえぇかわからんなるみたい。
ここにおかんが居たら、生の鋼さんにキャーキャー大興奮してると思うし、おとんのこんな姿見たら「もぉ、みち君は緊張しぃやなぁ」って緊張ごと笑い飛ばしてそうや。


鍵を持って戻って来た株元さんと、俺と陸とおとん。
この四人で、里山の中でも一番奥まったとこにある、住んでる人には立入禁止やって徹底してる場所まで歩くことになってん。
俺の荷物は、おとんと陸が持ってくれたしまた手ぶら。
頼み込んで、株元さんが持っていこうとしてた中から、いっちばん軽いトイレットペーパーとボックスティッシュを持たせてもらった。
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