839 / 911
35 準備 side 渡
4
しおりを挟む
怒られた鋼さんが、「ちーちゃん、ごめん~」って千里さんに抱きつこうとしたんやけど。
千里さん、まるで背中に目があるみたいに振り向かんでもヒラリと避けてな。
こっちまで走ってきはってん。
そのときには、何事もなかったみたいにいつもの千里さんに戻ってて。
車から荷物を降ろすん手伝ってくれてん。
って、言うてもなぁ。
車に積み込んでたんは、俺の着替えが入ったカバンと、里山にいる間に陸と見ようと思ったアルバムとかとかが入ったリュックの2つ。
一人で持てる範囲にしようって、無理矢理2つに分けたしな。
一個一個がパンパンに膨らんでる。
それを、千里さんがカバン、陸がリュックって二人で当たり前みたいに持ってくれてん。
「あの、持ちますよ??」
「お、俺も持つで?」
「いえ、荷物はこちらで持ちますよ」
「気にすんなって。
千里さんは元αで体力あるし、俺の荷物は親父が先に持ち込んでてくれるから手が空くしな」
俺もおとんも持とうとしたんやけど、ささっと千里さんは鋼さんのとこに戻って行かはるし。
陸は、最後尾を歩くからって、先に歩くよう促してくるしな。
鋼さんに俺から近寄るわけにも行かへんし、陸は持たせてくれる気がないのわかったし。
言葉に甘えて、おとんと二人で里山につくまで並んで歩いてん。
家ではおかんがいーっぱい喋るし、おとんとこんなにゆっくり話したんは初めてかもしれへん。
昔、ここに連れて来られた日のこととか。
病院に搬送されて熱でうなされる俺を見たときのこととか。
俺から抜け落ちてしもてる記憶を、おとんは隣で歩きながら丁寧に教えてくれた。
途中、川の脇を歩くときはやっぱり怖くてな。
おとんに手を繋いで貰っててん。
それを後ろから陸に見られてるんかと思うと、ちょっと恥ずかしかったなぁ。
テクテク歩いて里山に着くと、去年の夏に来たときとは風景が違ってた。
田んぼの稲は刈取られてるし、周りを囲む山々はところどころやけど紅葉し始めてる。
吹き抜けてく風も涼しくて、初めて来た場所みたいな印象や。
敷地入ってからは、おとんに今度は俺から話す番やった。
夏にあそこでバスケしたとか、俺は参加してへんけど皆はこの川でで釣りしてたとか。
泊まらせて貰ってたとこはあそこって家を指したときは、柿崎のじぃちゃんが借りてたところやって逆に教えて貰ったりもしたわ。
「渡は、ここで楽しく過ごしてたんだねぇ」
「うんっ
めっちゃ、楽しい夏休みやったでっ」
俺が即答したら、おとんはホッとしてた。
おとんにとっては、預けんかったら良かったって悔やんでた場所・・・俺には想像つかへん燻り続けてた感情を、静かに眠らせてるみたいな横顔やった。
千里さん、まるで背中に目があるみたいに振り向かんでもヒラリと避けてな。
こっちまで走ってきはってん。
そのときには、何事もなかったみたいにいつもの千里さんに戻ってて。
車から荷物を降ろすん手伝ってくれてん。
って、言うてもなぁ。
車に積み込んでたんは、俺の着替えが入ったカバンと、里山にいる間に陸と見ようと思ったアルバムとかとかが入ったリュックの2つ。
一人で持てる範囲にしようって、無理矢理2つに分けたしな。
一個一個がパンパンに膨らんでる。
それを、千里さんがカバン、陸がリュックって二人で当たり前みたいに持ってくれてん。
「あの、持ちますよ??」
「お、俺も持つで?」
「いえ、荷物はこちらで持ちますよ」
「気にすんなって。
千里さんは元αで体力あるし、俺の荷物は親父が先に持ち込んでてくれるから手が空くしな」
俺もおとんも持とうとしたんやけど、ささっと千里さんは鋼さんのとこに戻って行かはるし。
陸は、最後尾を歩くからって、先に歩くよう促してくるしな。
鋼さんに俺から近寄るわけにも行かへんし、陸は持たせてくれる気がないのわかったし。
言葉に甘えて、おとんと二人で里山につくまで並んで歩いてん。
家ではおかんがいーっぱい喋るし、おとんとこんなにゆっくり話したんは初めてかもしれへん。
昔、ここに連れて来られた日のこととか。
病院に搬送されて熱でうなされる俺を見たときのこととか。
俺から抜け落ちてしもてる記憶を、おとんは隣で歩きながら丁寧に教えてくれた。
途中、川の脇を歩くときはやっぱり怖くてな。
おとんに手を繋いで貰っててん。
それを後ろから陸に見られてるんかと思うと、ちょっと恥ずかしかったなぁ。
テクテク歩いて里山に着くと、去年の夏に来たときとは風景が違ってた。
田んぼの稲は刈取られてるし、周りを囲む山々はところどころやけど紅葉し始めてる。
吹き抜けてく風も涼しくて、初めて来た場所みたいな印象や。
敷地入ってからは、おとんに今度は俺から話す番やった。
夏にあそこでバスケしたとか、俺は参加してへんけど皆はこの川でで釣りしてたとか。
泊まらせて貰ってたとこはあそこって家を指したときは、柿崎のじぃちゃんが借りてたところやって逆に教えて貰ったりもしたわ。
「渡は、ここで楽しく過ごしてたんだねぇ」
「うんっ
めっちゃ、楽しい夏休みやったでっ」
俺が即答したら、おとんはホッとしてた。
おとんにとっては、預けんかったら良かったって悔やんでた場所・・・俺には想像つかへん燻り続けてた感情を、静かに眠らせてるみたいな横顔やった。
2
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載



【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点


偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる