ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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35 準備 side 渡

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鋼さんは、鼻が陸みたいにえぇんやて。
せやから、俺のうっすら出てしもてる発情フェロモンも感知するみたいでな。
「予防のために点耳薬はしてるから大丈夫」って千里さんに言わはったらしいんやけど、「バカネの大丈夫は信用出来ん!」って怒ったんやて。

プリプリしながら車に戻ってきた千里さんは、陸の実家で一緒に居たときよりずっと活き活きしてた。
やっぱり、鋼さんに会いたかったんやなぁ。
でも、千里さんっておかん曰く照れ屋さんやしな。
そんなん直接言うたらあかんなって、ここではちゃんと空気を読んだで。
ニヤニヤしてしもて、目が合ったときに不審がられてしもたけど。

千里さんはジープんとこまで戻って、陸が持ってきてた予備の黒マスクを鋼さんにつけさせてからな。
俺の半径5m以内に近寄づかんようにって、繰り返し鋼さんに厳しい顔しながら言って聞かせてて。
でも、それを聞いてる鋼さんはめっちゃ楽しそうに笑ってた。

こんときには、陸も元の位置に座り直してたからな。
俺は、落ち着いて二人の仲良しなお喋りのやり取りもしっかり聞けてじっくり見ることも出来てん。

千里さん、めっちゃ怒ってるるけど、それって鋼さんが俺に噛み付いたりせんように心配してるからやもんな。
うぅん、もしかしたら、発情してる鋼さんを俺らに見せたくないんかもっ
鋼さんもわかってるみたいで、マスクを着ける前にキスを迫って頭を叩かれてはった。
めっちゃ仲良しやなぁって、陸に言ったんやけど。
「は?」って顔をしかめられた。
陸には、あれが仲良しに見えへんのやろか?

里山には、ここから徒歩。
鋼さんが俺の発情フェロモンを感知してしもたら、番の千里さんも発情するしな。
アラーム代わりやって言うて、鋼さんの隣を歩いてくれるんやて。
鋼さんは、ジープに乗っけてきてた大きなクールボックスを肩にかけて、おとんの車から距離を取った。
千里さんから、ここでようやくもう出てきてえぇって言われたし、車に残ってた三人とも降りたんやけど。


「これからよろしくな」


鋼さんは、離れたとこから右手を上げてニカッて笑ってくれて。
俺も、「よろしくお願いします」ってペコンと頭を下げてん。
大人のαって、先生とかかなちゃんところの萩野さんしか実際に会ったことないんやけど。
こうやってαと元αの二人が並ぶと、どっちもスラッとしてて格好良ぇなぁ。
美人さんな千里さんが、鋼さんの前やとコロコロ表情が変わって可愛いしお似合い過ぎる二人やわ。

うーん、αの人に格好悪い人っておらんのやろなぁ。

鋼さんは陸のお父さんで、やっぱり目元とかよう似てるしな。
ついつい陸も大人になったらこんな感じなんかなぁって、想像してたわ。
森の中を歩くからなんやろなぁ。
黒いマンウテンパーカーにジーンズと踝まで隠れたごつめの靴。
特にこれといったポイントも無いし、ラフに着てはんねんけどめっちゃ似合ってるっ
おとんも、下は長靴の違いはあるけどよう似た格好してるのに全然違うわ。

千里さんは、鋼さんに「まずは謝罪だろうがっ」って、眉を吊り上げて耳まで引っ張って怒ってくれてるんやけど・・・俺は、自分がΩになったことに気をつこて欲しくないしな。
鋼さんの気さくなとこがすごく嬉しくて、初対面から好きになれた。
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