ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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34 準備 side 陸

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求愛給餌特化型のαにとっちゃ、食べ物を与える行為は特別だ。
それは、人間だろうが犬だろうが猫だろうが生きて意志の疎通が少しでも出来るんなら相手は問わねぇんだが。
特に恋愛絡めて好きな人間なら、食い入るようにその様子をずっと眺めていてぇし、なんならムラムラして勃つことだってある。

他の人間からは変態扱いされんだろうが、相手が与えたものを咀嚼して飲み込んでく様子を見んのは、フェラやセックスしてんのと変わらねぇぐらい興奮する。
与えた食い物が自分の気持ちと結びついて、相手が自分のことを丸ごと受け入れてるみてぇな錯覚に陥り堪らなくなるってことらしい。

そう、錯覚、なんだけどな。
頭でそれを理解したところで、この食べ物を与えたい衝動は止まらねぇし、ムラムラするのを抑えることは出来ねぇのが厄介だ。

食事中に親父の牙が伸び、千里さんが発情させられる、とか。
何かきっかけがあるんだろうが、たまーにあったしな。
そんなときは、海や空とそれぞれ飯を抱えて部屋から退散していた。
親の発情フェロモンでも、意識が持ってかれるのがすげぇ気分悪かった。

自分が作った食べもんだと、我慢しきれねぇ確率がたけぇみてぇだから俺も気をつけねぇとな。
部屋着に着替えてから客間に向かう。
チラッと先に座っていた渡を見ると、「はよ食べよっ」と手招きされた。

両家対面での夕飯。
ローテーブルに並べられたカレーをスマホで撮影して親父に送っといてやる。
隣の千里さんから「待たせておいて撮影するな」と睨まれたが。

親父から即レスで『明日俺が食べる分を残しておけよ』と来た。
気持ちは痛いくれぇ、わかる。
スマホを取り上げようとする千里さんの手を避けながら、『了解』と返信。
さっさと座布団の下にスマホを隠した。

そりゃ、自分のΩが作ったもんは食いてぇよな。

親父は、この血が邪魔してなかなか千里さんの料理には有りつけてねぇんだよ。
千里さんの作った料理を食べたい気持ちより、自分が作った料理を食べさせたい気持ちが遥かに勝る。
一緒に飯が食べれねぇときも、親父は作り置きして千里さんに自分の料理を食べさせてしまうからな。

初めて三枝家が挨拶に来た日曜の食卓は、昼も夜も親父の手料理が占めていた。
月曜日の朝までは、その残りで。
昼からは、お世話になっているのでと渡が台所に立っていた、らしい。

俺は、発情フェロモンを確認するためにずっとマスクをつけていたんだが。
千里さんから、教育の邪魔になるから接触するなと止められていたんだ。
同じ屋根の下にいんのに、別室、別行動。
話だけ聞いて、一人暮らしを始める前に使っていた部屋で手料理を噛み締めていた。

確定じゃねぇが、明日から二人きりになれる場所に行けんなら、わざわざここでもうフェロモン確認をする必要はねぇ。
家に上がる前に点鼻薬を使ったと千里さんに言ったら、「そこまでして一緒に私が作ったカレーを食べたかったか」とか誤解されたものの同室での食事許可が降りた。
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