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34 準備 side 陸
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なんとか、なる。
いや、なんとかするしかねぇよな。
俺は、どのタイミングでこの話を切り出せばいいのかを考えながら、実家を目指して歩けば一時間くれぇの距離を走り始めた。
千里さんに車で迎えに来てもらった方がはえぇんだろうが、頼子さんや渡も一緒に迎えに行きたいとか言い出しそうだし。
車に乗り込むまでに、喋りだして時間がかかるんじゃねぇかなと容易に想像がつく。
駅前は、α専用の高級マンションやデパートが並んでいるが、そこから離れていくにつれてテナントビルや住宅街が増え建築物の高さはどんどん低くなる。
俺の実家は、木造2階建ての借家。
βの平均的な家よか、敷地も家屋も広いしでけぇんだけどな。
飛び抜けて金持ちなかなちゃんや、菊川達に比べりゃかなりちぃせぇ。
代々不動産を手がけてんだから、どんだけでも便利な立地や住みやすい家の情報も表に出る前に押さえられるんだが。
それをせずにわざわざ駅から離れた場所に住んでんのは、親父も千里さん本人も他のαとの接触を極力避けたいってのもあるんだろうけど。
第一は、俺や妹達が近所で変異種Ωを作ってこねぇように。
25世帯もねぇ自治会の会員は、全員が親類縁者で固められ、血縁関係がねぇ人間の流入は無し。
笹部家の血を引いてて、子育てや自分でこの血をコントロールすることに不安がある家族が入れ替わりで住んで互いに監視しあっている場所だ。
因みに、駅と実家の間に親父が働いている不動産屋の営業所があり、駅の東口西口それぞれに、αとそれ以外の私立大学がある。
学生の街だけあって、駅前は夜中も騒がしいが住むには便利なとこだ。
子どもが自立した世帯は、喧騒を気にしなくていい駅前の高層マンションに引っ越してくとこもある。
そのうち、親父も千里さんもここから引っ越していくんだろう。
日が暮れた道を走り続け、よそもんが通らねぇ専用道路と化してる一車線に入ると静かなもんだ。
歩道は消えかかった白線が引いてるだけの寂れた道には、街灯もぽつりぽつりしかねぇし行き交う車もねぇ。
初めて渡達を案内したときは、このまま先に進んで大丈夫なのかと不安がってたくらいに人気がねぇんだよな。
鬱蒼と茂った山際を走り、緩やかなカーブを過ぎれば目の前に切り拓かれた田畑が広がる。
ぽつりぽつりとその間に家も見えてきて、俺の実家はちょうど集落の中央。
自治会館と公園の隣だ。
門の前で立ち止まり、点鼻薬で嗅覚を麻痺させる。
庭に、千里さんと三枝家の車が並んで停まってるってことは俺が一番最後だったようだな。
はぁ~、やっと帰ってこれたぜ。
乱れた息を整えてから玄関の扉を開けようとしたんだが。
それより先に、内側から扉がスライド。
「おっかえりっっ」
俺の帰りを待ち構えていた渡が、笑って出迎えてくれた。
頭で考えるより先に、つられて「ただいま」と笑って返す。
本当にここにいるんだと確かめたくて、抱きしめようと広げた腕に自ら飛び込んでくる渡が愛しくて仕方ねぇ。
いや、なんとかするしかねぇよな。
俺は、どのタイミングでこの話を切り出せばいいのかを考えながら、実家を目指して歩けば一時間くれぇの距離を走り始めた。
千里さんに車で迎えに来てもらった方がはえぇんだろうが、頼子さんや渡も一緒に迎えに行きたいとか言い出しそうだし。
車に乗り込むまでに、喋りだして時間がかかるんじゃねぇかなと容易に想像がつく。
駅前は、α専用の高級マンションやデパートが並んでいるが、そこから離れていくにつれてテナントビルや住宅街が増え建築物の高さはどんどん低くなる。
俺の実家は、木造2階建ての借家。
βの平均的な家よか、敷地も家屋も広いしでけぇんだけどな。
飛び抜けて金持ちなかなちゃんや、菊川達に比べりゃかなりちぃせぇ。
代々不動産を手がけてんだから、どんだけでも便利な立地や住みやすい家の情報も表に出る前に押さえられるんだが。
それをせずにわざわざ駅から離れた場所に住んでんのは、親父も千里さん本人も他のαとの接触を極力避けたいってのもあるんだろうけど。
第一は、俺や妹達が近所で変異種Ωを作ってこねぇように。
25世帯もねぇ自治会の会員は、全員が親類縁者で固められ、血縁関係がねぇ人間の流入は無し。
笹部家の血を引いてて、子育てや自分でこの血をコントロールすることに不安がある家族が入れ替わりで住んで互いに監視しあっている場所だ。
因みに、駅と実家の間に親父が働いている不動産屋の営業所があり、駅の東口西口それぞれに、αとそれ以外の私立大学がある。
学生の街だけあって、駅前は夜中も騒がしいが住むには便利なとこだ。
子どもが自立した世帯は、喧騒を気にしなくていい駅前の高層マンションに引っ越してくとこもある。
そのうち、親父も千里さんもここから引っ越していくんだろう。
日が暮れた道を走り続け、よそもんが通らねぇ専用道路と化してる一車線に入ると静かなもんだ。
歩道は消えかかった白線が引いてるだけの寂れた道には、街灯もぽつりぽつりしかねぇし行き交う車もねぇ。
初めて渡達を案内したときは、このまま先に進んで大丈夫なのかと不安がってたくらいに人気がねぇんだよな。
鬱蒼と茂った山際を走り、緩やかなカーブを過ぎれば目の前に切り拓かれた田畑が広がる。
ぽつりぽつりとその間に家も見えてきて、俺の実家はちょうど集落の中央。
自治会館と公園の隣だ。
門の前で立ち止まり、点鼻薬で嗅覚を麻痺させる。
庭に、千里さんと三枝家の車が並んで停まってるってことは俺が一番最後だったようだな。
はぁ~、やっと帰ってこれたぜ。
乱れた息を整えてから玄関の扉を開けようとしたんだが。
それより先に、内側から扉がスライド。
「おっかえりっっ」
俺の帰りを待ち構えていた渡が、笑って出迎えてくれた。
頭で考えるより先に、つられて「ただいま」と笑って返す。
本当にここにいるんだと確かめたくて、抱きしめようと広げた腕に自ら飛び込んでくる渡が愛しくて仕方ねぇ。
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