ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
823 / 911
34 準備 side 陸

7

しおりを挟む
千里さんのバカネなんて呼び方。
こんなとこで出して良いのか?
親父はこの後『へーい』とか、呑気に返しているが。
バカネは、親父が子どものときから千里さんにしか赦してねぇ呼び名だ。
自分はちーちゃん呼びをやめろとか言ってんのに、つい癖なのか、まぁ、怒った勢いでそのまま出てんだろうな。
親父とのやり取りを他からも見られてるって意識も、頭に血が上ると簡単に弾け飛ぶからな、この人。

物心ついたときにゃ、そこがちーちゃんの可愛いところの一つだと、親父は千里さんをからかって遊んでわざと怒らせていた。
あとから、木刀掴んで千里さんから追いかけ回されても笑って抱きしめてたしな。

αの能力を残している千里さんとはいえ、親父とは番関係にある。
どんだけ千里さんが相手を拒絶しても、親父が発情すれば流されるし、フェロモンでマウントも簡単に取れる。
そんな相手に怒られて喜んでるとか、ぜってぇやべぇだろうと今でもドン引きだ。
身内以外にこんな情けねぇ親父の姿は見せられねぇと、菊川達を実家に招くことさえ出来なかったんだが。
渡達には、早いうちにバレそうだな。

俺は、『今電車に乗った。駅からは走る』とチャット末尾に入力。
すぐに沈黙していたチャットが賑わう。

頼子『待ってまーす』
渡『気をつけて帰ってきて』
渡『い、一番に返したかったのに』
千里『文字数じゃないか?』

同じ家にいる筈なんだが、わざわざ千里さんがこんな内容まで書き込むなんて離れてんのか?

陸『千里さん、渡に教えてたんじゃねーの?』
千里『・・・今は教わっている』

・・・は?

渡『今、三人で三枝家特製カレーを作ってます』
頼子『おかわり出来るように鍋に山盛りよ』

添付された写真には、涙ぐみながら玉ねぎを切ってる千里さん。

鋼『ちょっっ?!ちーちゃんが、包丁持ってるっっ』
千里『陸っ、この画像の消し方を至急教えてくれ』
千里『こらっ、なんで仕事中のお前がもう見てるんだっ』
鋼『休憩中だよ、ちーちゃん。それよりも、そのカレー残しといてっっ』
千里『いつになるかもわからないのに、お前がここに戻るまで残るか』

親父に料理は任せきりにしていた千里さんのレア画像。
親父、さっさと保存してなんなら待受にまでしてんだろうし今更消しても遅いんだろうけど。

陸『画像添付した人しか消せない』

そう入力したら、しばらくして画像が消えた。
今日一日で何があったかわかんねぇけど、打ち解けてんなぁ。
スマホを片付けようとしたら、親父から別チャットに連絡が入った。

鋼『電車降りたら電話して来い』

わざわざグループチャットを外して来るなんて、なんのようだ?
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...