ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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34 準備 side 陸

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今度こそ、鐘の音が響いたらさっさとカバンを手に教室を後にした。
片付けを手伝わなくても、俺を呼び止める声はねぇ。
真っ直ぐ駅を目指し、走る。

発情期が近い渡は、日曜日から俺の実家に泊まっている。
俺の中では案の一つだったβ特区から他の地区へ家族で引っ越すってのは、かなり目立つからやめた方がいいんだと。
俺が思っているよりβ特区はいろいろ優遇措置があるとかで、勤務先がβ特区内なのにわざわざ外に出る人間は悪目立ち。
俺の番になるまでは、渡が変異種Ωだってことは伏せておきてぇからな。
早々に却下された。

頼子さんと道成さんは、渡が編入試験に合格した時点で腹は括っていたとかで。
「親離れが早く来るのは覚悟していたからねぇ」と寂しさを滲ませた道成さんの隣で、「でも、うちの子なことは変わらへんからな」と頼子さんは笑っていた。
渡も、社宅には住めなくなるってのは予想していたらしい。

本当にすげぇ。
こんなふうに俺達一族を受け入れてくれてる家族がいるなんて想像も出来なかった。

ってか、社宅もだが。
フェロモン対策してない俺の家は元から候補にも上がってねぇし、たちまち俺の実家で暮らすってことは千里さんの中では確定してて。
俺達が実家に着くのと入れ違いに、問答無用でαの親父を俺の家へ合鍵と泊まりセットを持たせて放り出してたしな。

千里さん計画じゃ、番になるまで自分の監視下。
本格的な発情期が来るまで、変異種Ωについて渡にレクチャーする気満々。
正直、千里さんの見張りつきは勘弁してほしいぜ。
番に対して偏った知識しかねぇ渡に、経験者として教えてくれんのはありがてぇけどさ。
千里さんの歴史まで遡ってガチガチに教えるやり方じゃ、ぜってぇ渡がビビる。
番について重く感じて、やっぱり嫌だとか断られたら・・・想像したくねぇわ。

ブルッと身体を震わせ、最寄り駅のホームから電車に飛び乗った。
渡と頼子さんが言い出した俺と渡とその両親、合計六人のグループチャットが日曜日から始まってんだが・・・この一日でどんなやり取りがあったのか、見んのこえぇな。

席は空いていたが座らず、しばらく開かない方の扉に背を預けてチャット画面に目を通す。
どうやら今日は頼子さんが三時で仕事が終わったらしく、駅まで千里さんが迎えに行ってるな。
あとは、外野に弾き出された親父のひたすら千里さんに会えないボヤキ。
それに絡んで話が盛り上がってたみてぇだな。

鋼『ちーちゃん、会いたい』
鋼『ちーちゃん、あーいーたーい』
千里『ここでちーちゃんは止めろ(怒)』
頼子『私もちーちゃんって呼びたいなぁ♡』
鋼『却下っっ』
千里『頼子さん、勘弁してください』

って朝から親父が騒がしいかと思えば、実家に着いたらしい渡も途中から参加していた。

渡『俺も鋼さんに会って、話を聞きたいです』
鋼『おっ、何が聞きたい?
やっぱ陸の昔のこととか?』
渡『今、アルバム見せていただいてます。
直接出会えたときは、陸のことも鋼さんのことも教えてください』
鋼『任せろ、任せろ』
千里『おい、バカネ。今は勤務時間だろうが。仕事に集中しろ(怒)』

あ"ー、んー、まぁ、楽しくやってそうだな。
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