ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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34 準備 side 陸

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こんなとこで出される食べもんを、この俺が口にできるわけがねぇ。
列ごとに回ってきたペットボトルの中からオレンジジュースを選び、教室の中央に固められた机の上から個包装の菓子をいくつか取ってカバンへそのまま入れる。
あとは、することがねぇ。

学園祭の売上は、衣装レンタルやら差し引くと二、三千円程度だったとかで、残りはゴリラからの金一封。
昼休みに外出許可を取った生徒が買いに走り、飲み物はカフェテリアのキッチンで冷してもらっていたとかなんとか。
その説明を聞いた後に感謝と労をねぎらう拍手が起こるが、気の無い俺はスルー。
当然、乾杯も参加できねぇから椅子に座ってるだけだ。
俺の机は菓子置き場にならずそのまんまだし、このままここで寝て待つか?

学園祭当日、クラスには顔を出したぐれぇでなんもしてねぇからな。
あぁだった、こうだったと、思い思いに菓子をつまみながらグループに分かれて話してんのを椅子に座って聞き流し、時間が過ぎるのを待つしかねぇ。

この時間、どこのクラスも似たことやってるから、多少騒いでも注意されることはねぇ。
最初は俺に遠慮していたβも、徐々に声も手振り身振りも大きくなる。
去年みてぇな大きな事件も無かったから、今年は成功と言えんだろう。
かなちゃんも楽しめていたようだしな。


「ねぇ、ねぇ、笹部っ
生徒会のステージ、そっちにデータってないの?
データ保存禁止だったって言ってて、誰も持ってないのよ」


稲葉が、自分の椅子をわざわざ俺の隣に運んできて陣取る。
俺のカバンを勝手に机の脇に引っ掛け、自分のペットボトルや菓子まで広げだした。


「はぁ?
知るかよ」

「えぇーーーっ、笹部、冷たい~っ」


頬を膨らませ、腕まで絡ませてこようとする稲葉から逃れて適当に空いていた椅子に移動した。
もう、俺には渡がいる。
女性αの誘いに応える必要はねぇが、まだ渡のことを公に出来ねぇから完全な拒否も出来ねぇ。

だいたい、ステージ関係は全部竹居が仕切っていた。
俺に聞かれても、なんも知らねぇわ。

そういや昼休み、竹居から渡宛に芝浦の妹とそれと同じグループのメンバーが別れてやっていたステージのデータを預かった。
かなちゃんが、菊川を通して門外不出予定だったデータを持ち出し可能にしたんだよな。
一応、その場で芝浦が妹に許可を取っていたが。

渡は、芝浦の妹が好きらしい。
あぁいうのが好み・・・には、なるよな。
思わず出たため息に、周りにいた生徒がビクつくがスルー。
渡は、男性βとして生きてきた。
頼子さんが、恋愛小説を使って男のΩが女とおんなじようにされる側になることは吹き込んでくれているが。
所詮、二次元は二次元。

発情フェロモンに酔ってる状態で番にするのは簡単だが、それをしたところで渡が女に反応しなくなるわけじゃねぇ。
そう、直近の俺が最優先で考えやるべきことは、番う前の渡に女よりも俺に反応するよう意識を変えること。
俺だけのΩだと、頭だけじゃねぇ。
身体でも理解してもらうことだ。
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