ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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33 挨拶

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槇地先生が向かった先は、職員室に隣接している会議室。
教室より広いそこには、机と椅子がロの字型で並べられていた。


「まぁ、座って話すか」


出入り口から近い角に、一対三で別れて座る。
まずは、三人の中央に座った俺からどこまで三枝の話を聞いているかを話す。
それを聞く槇地先生は、「そうか」とどこか嬉しそうに始終相槌を打っていた。

先程三枝が帰宅した連絡は直接入っているだろうが、そのことも最後に伝えると、槇地先生は三人の顔を順に見回してうんうんと頷いた。


「そうか、三枝は友達にも恵まれてるな」


面と向かって担任に友達と言わると、照れくさくて思わず視線を落としてしまった。
樟葉も同じだったようで、椅子の上で身体をモジモジ。
だが、ヤマは沈黙。
深く椅子に腰掛け、俺の横顔をジーッと眺めていて何も反応しない。


「こちらからは、今朝のショートホームルームで4月の健康診断の再検査対象から漏れていたので急遽休むことを説明する。
変異種Ωであること、笹部と番になることはもう決定事項だと両家の保護者から話は聞いているからな。
あまり適当なことも言えない。
ただ・・・」

「時期、ですね」

「あぁ、そこがなぁ・・・ふわっと一ヶ月以内には復学としかわからないらしいから、長期になればなるほど、クラスも、部活の方も心配する生徒は増えるだろうなぁ」


槇地先生は、そのあたりをうまく誤魔化すのは難しそうだなぁとぼやく。
確かに、三枝はクラスや部活のムードメーカーであり、学年男女問わず仲が良い。
突然いつまでかもわからずそんな理由で休んでしかも長引けば、心配するなという方が無理だろう。


「でしたら、桜宮の名前を出していただいて構いません。
去年のことで、倭人さんと俺の恩人である三枝が特別扱いで専門の病院での精密検査を受けていると先生から言ってください。
もし、面会に行きたいと申し出があってもこちらで遠方だからと断りを入れます」

「それで納得・・・するかぁ?」

「しなくても、直ぐに試験期間に突入するので」


きっとそれどころじゃなくなる、と口にはしなかったが十分担任には伝わったようだ。
今度の試験は、そのまま進路を話し合う三者面談の資料として使われるからな。
体育祭と学園祭で浮かれていた分、一気に現実に引き戻される。


「確かにな。
焚きつける意味を込めて、進路希望申請を朝に返して見直させるか。
ん、そうしようっ
じゃ、そんな感じでよろしくな」


わかりましたと立ち上がり、会議室から出ようとしたんだが。


「あ、樟葉はちょっと残って」

「え、えぇ?!」


話は終わったと気を抜いていた樟葉。
椅子から立ち上がろうとしていた身体が大きく跳ね、バランスを崩してそのまま着席。
まさかここで居残りを告げられるとは思ってなかったらしい。


「一緒に教室まで戻るから、二人は先に行ってていいぞ」


ヒラヒラと手を振る槇地先生は笑顔だが。
樟葉は、「えぇーっ」と震えた声で槇地先生を見上げている。
常にクラスで全教科最下位だからな。
恐らく、試験前に発破をかけられるんだろう。

頑張れと心の中でエールを送り、ヤマと俺は教室へ向った。
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