ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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33 挨拶

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「これは・・・」


言い澱む笹部の代わりに、三枝が「あんな、あんな」とさっきの調子で割り込んできた。
笹部はギョッとして止めようとしたが、間に合わない。


「朝にな、理事長室に呼ばれてな。
あ、俺と陸の親、おかんと孕親の千里さんと四人で行ってきてん。
ほんまはおとんも来たかったんやけど、仕事が休めへんくて。
あと、陸のお父さんは千里さんに来るなって言われてお留守番やってん。
千里さんが車で迎えに来てくれてな。
四人でここまで来たんやけど、あっちのロータリー側って行ったこと無かったし広くてビックリしたわ。
あ、それで、えっと理事長と、田栗先生と槇地先生が待っててくれてな。
俺と陸が両想いになって、あ、ちゃうわ。
陸が俺が昔遊んでた子やってわかったってこと話してな」


いろいろ言いたいことがあるようで、三枝はあっちにこっちに飛びそうになる話をなんとか軌道修正しながら順を追って教えようとしてくれているらしい。
時折、笹部の顔を確かめたり、視線が宙を彷徨っているが一生懸命、話を続けてくれる。


「俺が変異種Ωなんは、理事長と田栗先生と槇地先生は知ってて・・・そう、そう、もう発情フェロモンが出てるってことも話して」


なに!?

俺は、咄嗟にヤマの頭を抱えて覆いかぶさったが、こんなことではΩの発情フェロモンから完全に庇えない。
一刻も早く部屋から退避させようとしたが、ヤマの両腕が腰に回ってそのまま膝に乗り上げるように持ち上げられてしまった。


「え、ヤマ、大丈夫なのか??」


覗き込むと、普段と変わらないヤマがそこにいた。
息も乱れてないし、ヤマの発情に引っ張られるはずの俺の身体にも兆候がない。


「あぁ、何も感じない。
まだ、初期で感知できないくらいに弱いのかも」


安心しろと頭を撫でられ、一気に引き絞られた緊張の糸が緩みホッと息を吐く。
お、脅かすな・・・いや、安心すべきところじゃないな。
ヤマの膝に座らされたままだったが、振り返って三枝を睨む。


「おい、三枝。
出てるということは、抑制剤は?」

「う、打ってない・・・」


俺の気迫に押され、モゴモゴと答える三枝。
αがいる場所に、発情期に入ったΩが丸腰で登校するなんてどういうことだっっ
自覚の無い行動を怒鳴りつけようとしたが、笹部が待ってくれと立ち上がり三枝を庇うように間に立った。


「今回の発情期で番になるから打たせてねぇんだよ。
それに、鼻が良い俺達一族でもまだ変異種Ωに変えた俺にしかわからない程度だ」


そんなもの、番のαを取られるかもしれない俺にはなんの慰めにもならない。
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