ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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33 挨拶

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鍵のかかっていなかった生徒会室へ、ノック無しに入っていったヤマの後から入室すると、笹部と三枝は向かい合わせの自分達の席で座って待っていた。
ここ最近、笹部が三枝を避けていたから久しぶりに見る光景だ。


「待たせたな、悪い」

「えぇよ、えぇよ、かなちゃん。
無理に時間とってもろたん、俺やもん」


俺も三枝の隣、自分の席に座ると三枝は笑って迎えてくれた。
最後に入ってきた樟葉は、扉を閉めたその場所でぽかんと口を開けたままキョロキョロ珍しげに部屋の中を見渡している。
そうか、樟葉は生徒会室へ入ったのは初めてだったか。

当たり前のようにヤマは自分の椅子をコロコロ転がして俺の隣に座る。
と、なると、樟葉に座ってもらう席としては、俺の向かいが固まって話すには良いわけだが。
接点がほぼない二人を隣にするより、三枝が笹部の隣に移動した方が話しやすいよな。


「三枝、田栗の席に移動して貰っても良いか?
その方が、笹部に話のフォローもしてもらいやすいだろうし」

「あ、そうやな。
それやったら、みこちゃんはここに座って」


三枝は、立ち上がって自分の席まで樟葉の手を引いて連れてくる。
声にこそ出さないが、「うわぁぁああ」と驚いている文字を背負っている樟葉はされるがままだ。

まぁ、確かにな。
優秀なαが代々生徒会長を務めているんだが、そのとき持ち込んでいた私物が置き土産としてこの部屋で受け継がれているからな。
なんというか、置いてあるものにまとまりがないし、なにせ多種多様で数が多いのだ。

この部屋は、生徒会役員の定員7人が使うには教室と同じ大きさがあり広い。
広い、からだろうな。
ソファーやボード以外に、ついつい持ち込んだにしてはおかしい大皿や壺が直接床に飾られていたり。
壁際に並んでいるガラス扉のアンティークの棚の中には、陶器人形やフィギュアのコレクション、漫画から歴史小説まで多種多様な書籍が押し込まれていたり。
もう一つの棚には、映画やドラマのDVDからゲームまで揃えられていて、天井にはプロジェクターを写すためのスクリーンが取り付けられていたりする。

この部屋に関しては、生徒会が自由に使って良いにしても自由過ぎるのだ。
初めて来た人間は驚くし、たまに遊びに来たいと言う人間もいる。


「色々あるけど、気にするな」

「う、うん」


樟葉はやっと正気に戻ったのか、俺と目を合わせて頷いた。
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