ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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33 挨拶

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昨日三枝から、陽太さんと遥馬さん、それに樟葉も含めた五人のΩで登録しているグループチャットを通じて改めて知らされたのは3つのこと。

1つ目は、両想いになれたこと。
2つ目は、笹部が学園祭当日に三枝の両親に挨拶に行ったこと。
3つ目は、その翌日に今度は三枝家一同で笹部家に挨拶に行ったこと。

本来は、加害者側と被害者側で争ってもおかしくない間柄。
ここに出てきた挨拶と言う単語に、俺は違和感を覚えたんだが。
他の三人がお祝いムードだったので、水を指すのも悪いなと流しておいた。

過去、笹部に変異種Ωへ変えられていた三枝だが、本人達の預かり知れないところで親同士は連絡を取り合っていたようだし。
しかも三枝は、Ωになったことを苦に自殺することがないよう、母親頼子さんにβとして育てられつつもΩ向けの恋愛小説にヒタヒタどころかどっぷり漬けられ。
それが功を奏したらしく、笹部が相手ならΩになっていることを受け入れて喜んでいられる状況を作っているんだからな。

そう、いくら理解し難くても、赤の他人である俺が両家のことにあえて口を出さなくていい。
出すなら、笹部が三枝になにかやらかしたときだ。

俺は固い決意に逸った心を落ち着け、その場で樟葉に連絡を入れなければと胸ポケットからスマホを取り出した。
昨晩、俺と三枝と樟葉の別チャット宛に、三枝からショートホームルームまでに直接話したいとメッセージが送られて来ていたんだ。
きっと、今の三枝に、樟葉に連絡する余裕はないだろう。
生徒会室に来るよう伝えるために操作していたら、ちょうど柴田と樟葉先輩に両側をガードされて歩いてくる樟葉の姿が見えた。


「おはようございます」

「おはようございます、菊川生徒会長、桜宮副生徒会長。
今年の学園祭、大成功でしたね。
お疲れ様でした」

「フフフ・・・おはよう」


三人も気付いたらしく、先に挨拶される。
去年の学園祭は、樟葉先輩にかなりフォローして貰っている。
申し訳なかったあのときの気持ちが蘇り、思わず謝ろうとしたんだが。


「おはようございます。
樟葉先輩には、去年ご迷惑を」

「桜宮副生徒会長」


途中で名前を呼ばれ、僅かに首を左右に振られた。
樟葉先輩の優しい眼差しに、俺は黙って頭を下げる。
樟葉先輩はαなのに、初めて生徒会に入ったΩの俺と同じ役職に就くことを拒まず、一年間ヤマだけじゃなく俺の仕事のフォローや副生徒会長としての役割を教えてくれた。
いくら、大切にしているΩの弟がいたとしても、気位の高いαになかなか出来ることじゃない。
尊敬出来る先輩だ。

樟葉先輩はそれ以上何も言わず、会釈して三年生の下駄箱がある方へ去っていった。
柴田は、下駄箱の前からヤマと俺が退くと、自然な動作でそこから先に樟葉の上履きを出して足元に用意。
αがΩの靴を用意するという異様な光景だが、周りの生徒はこのやりとりに見慣れてしまっていて驚く者はもはや誰も居ない。
相変わらず、柴田は樟葉に過保護だ。
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