806 / 911
33 挨拶
3
しおりを挟む
昨日三枝から、陽太さんと遥馬さん、それに樟葉も含めた五人のΩで登録しているグループチャットを通じて改めて知らされたのは3つのこと。
1つ目は、両想いになれたこと。
2つ目は、笹部が学園祭当日に三枝の両親に挨拶に行ったこと。
3つ目は、その翌日に今度は三枝家一同で笹部家に挨拶に行ったこと。
本来は、加害者側と被害者側で争ってもおかしくない間柄。
ここに出てきた挨拶と言う単語に、俺は違和感を覚えたんだが。
他の三人がお祝いムードだったので、水を指すのも悪いなと流しておいた。
過去、笹部に変異種Ωへ変えられていた三枝だが、本人達の預かり知れないところで親同士は連絡を取り合っていたようだし。
しかも三枝は、Ωになったことを苦に自殺することがないよう、母親頼子さんにβとして育てられつつもΩ向けの恋愛小説にヒタヒタどころかどっぷり漬けられ。
それが功を奏したらしく、笹部が相手ならΩになっていることを受け入れて喜んでいられる状況を作っているんだからな。
そう、いくら理解し難くても、赤の他人である俺が両家のことにあえて口を出さなくていい。
出すなら、笹部が三枝になにかやらかしたときだ。
俺は固い決意に逸った心を落ち着け、その場で樟葉に連絡を入れなければと胸ポケットからスマホを取り出した。
昨晩、俺と三枝と樟葉の別チャット宛に、三枝からショートホームルームまでに直接話したいとメッセージが送られて来ていたんだ。
きっと、今の三枝に、樟葉に連絡する余裕はないだろう。
生徒会室に来るよう伝えるために操作していたら、ちょうど柴田と樟葉先輩に両側をガードされて歩いてくる樟葉の姿が見えた。
「おはようございます」
「おはようございます、菊川生徒会長、桜宮副生徒会長。
今年の学園祭、大成功でしたね。
お疲れ様でした」
「フフフ・・・おはよう」
三人も気付いたらしく、先に挨拶される。
去年の学園祭は、樟葉先輩にかなりフォローして貰っている。
申し訳なかったあのときの気持ちが蘇り、思わず謝ろうとしたんだが。
「おはようございます。
樟葉先輩には、去年ご迷惑を」
「桜宮副生徒会長」
途中で名前を呼ばれ、僅かに首を左右に振られた。
樟葉先輩の優しい眼差しに、俺は黙って頭を下げる。
樟葉先輩はαなのに、初めて生徒会に入ったΩの俺と同じ役職に就くことを拒まず、一年間ヤマだけじゃなく俺の仕事のフォローや副生徒会長としての役割を教えてくれた。
いくら、大切にしているΩの弟がいたとしても、気位の高いαになかなか出来ることじゃない。
尊敬出来る先輩だ。
樟葉先輩はそれ以上何も言わず、会釈して三年生の下駄箱がある方へ去っていった。
柴田は、下駄箱の前からヤマと俺が退くと、自然な動作でそこから先に樟葉の上履きを出して足元に用意。
αがΩの靴を用意するという異様な光景だが、周りの生徒はこのやりとりに見慣れてしまっていて驚く者はもはや誰も居ない。
相変わらず、柴田は樟葉に過保護だ。
1つ目は、両想いになれたこと。
2つ目は、笹部が学園祭当日に三枝の両親に挨拶に行ったこと。
3つ目は、その翌日に今度は三枝家一同で笹部家に挨拶に行ったこと。
本来は、加害者側と被害者側で争ってもおかしくない間柄。
ここに出てきた挨拶と言う単語に、俺は違和感を覚えたんだが。
他の三人がお祝いムードだったので、水を指すのも悪いなと流しておいた。
過去、笹部に変異種Ωへ変えられていた三枝だが、本人達の預かり知れないところで親同士は連絡を取り合っていたようだし。
しかも三枝は、Ωになったことを苦に自殺することがないよう、母親頼子さんにβとして育てられつつもΩ向けの恋愛小説にヒタヒタどころかどっぷり漬けられ。
それが功を奏したらしく、笹部が相手ならΩになっていることを受け入れて喜んでいられる状況を作っているんだからな。
そう、いくら理解し難くても、赤の他人である俺が両家のことにあえて口を出さなくていい。
出すなら、笹部が三枝になにかやらかしたときだ。
俺は固い決意に逸った心を落ち着け、その場で樟葉に連絡を入れなければと胸ポケットからスマホを取り出した。
昨晩、俺と三枝と樟葉の別チャット宛に、三枝からショートホームルームまでに直接話したいとメッセージが送られて来ていたんだ。
きっと、今の三枝に、樟葉に連絡する余裕はないだろう。
生徒会室に来るよう伝えるために操作していたら、ちょうど柴田と樟葉先輩に両側をガードされて歩いてくる樟葉の姿が見えた。
「おはようございます」
「おはようございます、菊川生徒会長、桜宮副生徒会長。
今年の学園祭、大成功でしたね。
お疲れ様でした」
「フフフ・・・おはよう」
三人も気付いたらしく、先に挨拶される。
去年の学園祭は、樟葉先輩にかなりフォローして貰っている。
申し訳なかったあのときの気持ちが蘇り、思わず謝ろうとしたんだが。
「おはようございます。
樟葉先輩には、去年ご迷惑を」
「桜宮副生徒会長」
途中で名前を呼ばれ、僅かに首を左右に振られた。
樟葉先輩の優しい眼差しに、俺は黙って頭を下げる。
樟葉先輩はαなのに、初めて生徒会に入ったΩの俺と同じ役職に就くことを拒まず、一年間ヤマだけじゃなく俺の仕事のフォローや副生徒会長としての役割を教えてくれた。
いくら、大切にしているΩの弟がいたとしても、気位の高いαになかなか出来ることじゃない。
尊敬出来る先輩だ。
樟葉先輩はそれ以上何も言わず、会釈して三年生の下駄箱がある方へ去っていった。
柴田は、下駄箱の前からヤマと俺が退くと、自然な動作でそこから先に樟葉の上履きを出して足元に用意。
αがΩの靴を用意するという異様な光景だが、周りの生徒はこのやりとりに見慣れてしまっていて驚く者はもはや誰も居ない。
相変わらず、柴田は樟葉に過保護だ。
1
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載



【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点


偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる