ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
802 / 911
32 挨拶 side 渡

23

しおりを挟む
「あー、明日何着てこうかなぁ。
こんなことなら、今日美容院に行っとけば良かったわ。
髪も染め直したかったなぁ。
手土産かて、買いに行けてへんし・・・あ、でも、食べもんは持っていったら、うちらが千里さんの自慢してた鋼さんの手料理、食べれ」

「グフッ」


話の途中で、笹部君が飲んでたお茶で噎せたっ
だ、大丈夫??
俺、隣やったし背中を擦ってんけど、変なとこ入ってしもたみたいでなかなか落ち着かへん。
おかんも流石に口は止めて、「大丈夫?」って声かけてくれたわ。
おとんも心配して、笹部君が手に持ったままやった湯呑を受け取って落ち着くん待ってくれてた。


「・・・ハッ、ん、大丈夫、です。
てか、千里さん、自慢してんのかよ」

「あれ?
そこ意外やった?
毎日やないけど、写真も送ってくれてるで?
今年の春から二人暮しになって、千里さんの好きなもんがよけ出るようになったから、太りそうって」


おかんが、テレビ台の上によけてた自分のスマホを持ってきて、その画面を「はいっ」て向かいに座ってた俺らに見せてくれたんやけどな。
机に並んだ彩り綺麗なちらし寿司とか茶碗蒸し、あとお刺身にこれはカルパッチョやろか?
どれも、器の盛り付けから凝っててお店みたいや。


「うわぁ・・・めっちゃすごいなぁ」

「魚も市場まで一緒に買いに行ったり、船釣りにも行ったり、凄い楽しそうな鋼さんの後ろ姿の写真送ってきてくれてるで。
ツーショットは送れませんっのつれない一点張りやけどな」

「千里さん・・・へぇ・・・」


なんや、笹部君、目ぇが遠いとこ眺めてる。
でも、お茶を飲み直したらちょっと気を取り直せたみたい。
ふぅ、って一息ついてな。


「食べ物に関して、配慮いただきありがとうございます。
今後、もし何かあれば、さえ・・・渡君を一度通し」

「わあぁっ」


俺、声が思わず出てしもたっ
大きな声に、笹部君はギョッとしてるけどそれどころやないで。
わ、わ、渡君って言われたぁっ
笹部君に下の名前で呼ばれたん、初めてやでっっ
心臓が、キュンッて鳴ったわっ

あぁ、でも、君付けより呼び捨てがえぇなぁ。
笹部君に、渡って言われたい。
俺も、俺も・・・りりりり、り、陸って呼びたいっ
キャーキャー自分の赤くなった顔を手で抑えてたらな。
笹部君には心配されるし、おかんとおとんには生暖かい目で見られてしもた。

もぉ、しゃーないやんっ
今日がお付き合いし始めなんやしっ
でも、これも一緒に聞きたいことになるんやろ。
俺、説明は諦めて、開き直って一人で喜ぶことにしてん。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...