ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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32 挨拶 side 渡

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「な、なんで制服なん?」


いや、それよりさっきの一緒に住む話聞かなあかんのやけどっ
聞きやすいとこからにしよっ
チラチラ、シャツのボタンを一番上まで留めててネクタイもビシッと決めてる笹部君を見上げる。
いつも、胸元緩めてるのに珍しいなぁ。


「まともな服って、これしかねーんだよ」

「へ、へぇ、そうなん??
普通の服でも、全然えぇと思うけど?」

「挨拶に行くのに、普段着はねぇわ」

「んん?
なんや、結婚の挨拶みたいやなぁ」


俺、笑わすつもりの冗談で言ってんけど。
笹部、ピクリとも笑わへん。


「それは、また改めてだな。
一度に済ます話でもねーし」


サラッと言われて、ドキンッ
し、心臓が止まりそうっ
聞き返す声も裏返ってもうたっ


「え、え、あの、俺と笹部君、結婚すんの?!
あと、あと、一緒に住むとかほんまなん??」

「あぁ、俺はそのつもりだ」


俺はアワアワしとるのに、笹部君は真面目な顔で頷いて・・・あれ、マスク?
笹部君の顔半分隠してた黒いマスクが無いで??
なんや、呼吸困難みたいになって声も出ぇへんしな。
パタパタ、自分の口の前で両手を上下に動かしたら意味は通じたみたい。


「あぁ、点鼻薬で麻痺させてる。
マスク姿で挨拶もねーだろう」


笹部君、俺の隣に腰下ろしてな。
ブレザーのポケットから蓋付きの容器を出して見せてくれた。
鼻の中にノズルを入れて、細かい薬の粉を吹き付けるんやて。
へぇ、これやったら、顔も見えるし息止めんでもチュウ出来るやん。

や、なくてやな。

えーっと、えーっと・・・頭が追いつかへんっ


「ん?
どうしたんだよ?」


どうしたんだって、どうしたがいっぱいやで?!
なんか、頭が混乱してな。
俺の口から、ヘナヘナと漏れた言葉はコレやってん・・・


「お、俺、プロポーズされてへんもん・・・」


笹部君、隣で目ぇ丸くしてたんやけどな。
カリカリ頭をかいて、頭を下げてくれてん。


「・・・そうだな、俺が浮かれて話を急ぎ過ぎた。
ごめん」

「さ、笹部君も、浮かれてんの?!」


えーえー、そんなことあんの?
笹部、何があっても動じひんぽいやん。


「・・・浮かれるに決まってるだろ。
三枝から、俺の番になるって言われたんだぞ」


「アホ」って言いながら、笹部がぷにっと俺の頬をつねってな。
めっちゃ照れ照れの笑顔向けてくれんねん・・・うわあぁ、笹部君のこんな顔、初めて見たっ
マジマジ見てたら、恥ずかしかったみたい。
笹部君、顔背けて立ち上がってしもた。


「ほれ、早くお前ん家に行くぞ。
待たせてるしな」

「うんっ
あの、あの、でも誤解せんといてな?
急に一緒に住むとか、結婚とかビックリしてしもてて。
俺、笹部君と住みたくないとか、結婚したないってわけやないんやで?」


笹部君の背中を追いかけながら、言い訳してしまう。
だって、断ったと思われたら嫌やん。
笹部君、ホッとしてくれた。


「そっか・・・けど、正直、一緒に住む話は早めに進めてぇんだわ。
もし、駄目だってんなら、お前の実家ごとセキュリティのたけぇとこに引っ越してもらって俺が送迎するか、今回の発情期は薬で抑えるかしねぇとな。
他のαにフェロモンレイプとか、俺、相手に非がなくても・・・ブチ殺す自信があるし」


玄関で靴の汚れを確認してた笹部君。
振り返ったときの表情の剣呑さに、思わず直立不動でゴクリと生ツバ飲み込んでしもた。
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