ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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31 学園祭 side 渡

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興奮し過ぎて、心臓がドクドク言うてるわ。
笹部君、マスクしてくれてて良かったっっ
松野君でも、キャーキャー悲鳴が上がっててんで?
いつも怖いって思われてた笹部君が笑顔見せたら、どんなことになるかっ
そう、周りもやけど、歌だけやなくて次々アクロバットな技を決めてた姿に笑顔まで見てしもたら俺かてどうなってしまってたかっ

曲が終わって四人がステージから消えて。
もっと聴きたいし見たいって思うんやけど、このままやったら中毒になりそうやったしほっとしてるとこもあって。
それは皆も同じなんかなぁ。
音が途切れたグラウンドは、感想を言い合う声もせんくて。
ほぅ、って感嘆のため息が伝染してく。
一人一人、自分の中で今のステージを噛み締めてるようやった。

いやいや、俺以外の生徒会役員は皆格好良くて可愛くて凄いってわかってたんやけど。
こんなん見せられたら、こんな人らと一緒にいるんやなぁって怖なってくるわ。

『七つ星』の凛ちゃんらに憧れてるのとはまた違う。
直ぐ隣にこんなに気持ちが持ってかれる人がいるなんて。
わぁ、もぉ、これから皆とちゃんと話せるかなぁ。
それくらいの衝撃を受けて、脳がビリビリ痺れてた。

かなちゃんを見たら、めっちゃ赤い顔を両手で隠してた。
最後、菊川君が「いつもいっしょ」のソロパートでな。
ステージから軽々飛び降りて、かなちゃんの前まで来てな。


『ねぇ、君は俺に気付いてる?
君が居ないと、呼吸もできないこんな俺を』


って、って、ってーーーっ
蕩ける笑顔で歌うんやもんっっ
かなちゃん、菊川君に圧倒されて口をパクパクさせてたで。

はぁーって魂も抜けそうなくらいに息を吐いてたら、ざわざわって周りがしだしてな。
見上げたらステージに人影が。
いやいや、もぅこれ以上は心臓がもたへんでって思ってんけどな。
海ちゃんと空ちゃんを従えたホマレンが、無表情で後ろから歩いてきて。
冷たい眼差しで、ステージを見渡す姿を見たらもうあかんねん。
目が離せへんねんっっ


『おやおや、もう降伏か?』


両腕を組んだホマレンは、硬質な声で溜息までついた。


『あらあら、そんなことはないでしょう?
我らが副生徒会長の歌を聞かずに、この終了式は終わりませんもの』


海ちゃんが、タプタプの胸を組んだ両腕で押し上げながら冷たく笑う。


『ほらほら、なーにぐったりしてるんだよ?
手拍子っっ』


空ちゃんが、ガンッと右足でステージを力任せに打つと、皆夢から覚めたみたいにハッとして手拍子を始めた。
俺も、いつもと違って怖い三人に呑まれてな。
一緒に手拍子始めたで。


『あらあら、そんなものなのかしら?
先程までの勢いはどこに行ったの?
さぁ、もっと響かせなさいっ』

『手拍子を続けろっ』


冷たい微笑みを浮かべたまま、煽る海ちゃんと空ちゃん。
こっちに目を向けられると、ゾクゾクしてくるんやけどっっ
後ろでのんびり学園長が話してんのが信じられへんっ


「うちの誉は何しても可愛いね~」

「この甥っ子バカが」

「ゲンゾーも、誉のことでは既にバカでしょうが」


なんか、ドスドス音が聞こえてくんねんけど、何してるんやろ??
俺は、これからこの三人が何を歌うんかが気になってそれどころやないで。
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