ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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31 学園祭 side 渡

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俺はすっかり腰が引けてるし、舞台中央寄りの菊川君の隣にいたかなちゃんもそれは一緒やった。
菊川君に「どういうことなんだ?」って戸惑いながら聞いてる。
『急げ、急げ』って竹居君から急かされても、困ってしまうやん。


「いいから、行けって」


マイクに声が入らんように庇いながら、笹部君は目を細めて笑ってる。
えぇー、でも、あんなとこ目立つやん?!
それやったら、ほら、麻野君のおる端っこで俺は十分やで?
かなちゃんも、菊川君に何か言われてブンブン首を横に振ってた。


「まぁまぁ、皆を待たせるのも悪いしね。
私と一緒にここから降りようか?」


学園長が、階段のところまで行って俺らを手招き。
そ、そう言われると・・・ステージの下では、これから始まるパフォーマンスを心待ちにしてる人がズラッと並んでて。
特に女子生徒なんか、両手を握りしめてキャーキャーはしゃいでる。

あぁ、もぉ、恥ずかしいけど、恥ずかしいけど。
俺かて見たいもんっ
迷いを吹っ切って、笹部君を見たら笑ってくれるしな。
俺は、学園長のとこまで走ってまだ躊躇ってたかなちゃんに呼びかけた。


「かなちゃん、行こ?」

「・・・わかった」


一緒に階段を降りて行ったら、先に降りてた学園長が田栗先生の首に強引に腕を回してるとこやった。


「ほらほら、ゲンゾーも特等席で見ようぜ?」

「いやいや、俺はここからで十分だっ」

「うちの誉の晴れ姿、ちゃんと見てやってよ~」

「お前なぁ、首が締まるって」


仲良ぅ言い合いしながら、学園長は特等席まで引きずってかはったわ。
田栗先生も、本気で抵抗はしてへんし、きっとホマレンのことを真ん中で見たいんやろうな。
うん、俺も、ここは素直になろう。
恥ずかしいけど、四人に増えたしなっ
こうなったら、笹部君から目ぇ離さへんでっ

ステージのちょうど中央に着いたら、先に来てた学園長と田栗先生から自分らより前の方が見やすいだろうと前に押し出されてしもた。
前にかなちゃんと俺。
後ろに学園長と田栗先生。
ちょうどそこは、四組の皆が陣取ってて道を作るのに割られた場所やった。
両側は、見知った顔ばっかりや。
みこちゃんは、一番前で梛木さんらにしっかりガードされてるわ。
芝浦君と柴田君は、背が高いし四組の後ろの方に居た。


「よっ、渡」

「あ、冬馬やん」


隣から顔を出してきた冬馬に声をかけられた。
歓声に掻き消されそうやけど、ちょっと近寄ったらなんとか話せる。
ステージの上では、一旦皆が後ろにはけてて無人になってたわ。


「今年の生徒会、すげーじゃんっ」

「うん、凄いなっ」

「こーら、他人事じゃ無いだろ?
お前も、生徒会役員っ」


んー、そうなんやけどなぁって首をひねってまう。
俺、生徒会の仕事、部活優先しててあんまり出来てへんしなぁ。
もっと笹部君に仕事回して貰おうかな。
ぼんやりそんなこと考えてたらな。
突然、グラウンドに低音ビートが鳴り響いて、ステージを見上げたら笹部が出てきててんっ
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