ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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31 学園祭 side 渡

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笹部君の放送が終わると、グラウンドの両側で待ち構えていた海ちゃんと空ちゃんが、ステージ前に向かって大急ぎで柵を抱えて等間隔に並べてく。
腕章付けた生徒がそれぞれ五人ついててな。
三人は海ちゃんと空ちゃんの手持ちがなくなったら渡してく係。
他の二人は、柵と柵の間をチェーンで繋いでいって、それまでに着いた生徒の後ろに境界線を作っていく係みたいや。

僅差で柵の外になってしもた生徒が「そんなぁ~」てゴネてても、「ダメダメ、ハーイ、ざんねーん」と海ちゃんは笑顔でスルーして、柵を並べるの優先。
空ちゃんもおんなじ様に絡まれてたけどな。
「アッハハー、例外はナシだよ。友達と別々とか、一緒に来てないのはそっちの都合で空ちゃんは知りませーん」とバッサリ言いながらテキパキ並べてく。

あっという間に、ステージ前の観客スペースは放送前と後の2ブロックに分けられた。
まぁ、そうせんと、どんどん後ろから押されて、誰か倒れて怪我したらあかんもんな。
やっとグラウンドに出てきた生徒は、その様子が走る前から見えたんやろな。
ブーブー文句言いながらも俺の横を走っていったわ。

けど、背後で言い争う声が聞こえてな。
振り向いたら、女子が五人、輪になって揉めだしててん。


「うっそ、なんで分けられてんのっ」

「あんた達がトロトロ片付けてたからじゃんっ」

「はぁ?
くっちゃべってた癖に何様なのよっ」


うわぁ、ヤバイんちゃう?
周りの生徒は、チラチラ気にしながらも足は止めんと行ってまうけどな。
五人は、二手に分かれて段々ヒートアップ。
俺が仲裁に行こうかと思ってんけどな。
俺より断然頼れる人の顔が、その後ろから小走りで来てんのが見えたし任せることにした。


「何を騒いでるんだ?」

「んなことしてる間に、どんどん抜かされてるけどいーのかぁ?」

「・・・」


あれ?
かなちゃんと田栗先生とホマレンが来たしな。
絶対、ホマレンが微笑んで怒ってる女子を諌めるかと思ってんけど。
ホマレンは、田栗先生のヨレヨレ白衣の裾を握って無言やった。


「「キャーーーーーっ」」 

「・・・なんだ、俺達は化物か?」


かなちゃんと田栗先生が声をかけた途端、悲鳴を上げながら走り去っていった女子にかなちゃんは呆然。
まぁ、仕方ないんちゃうかなぁ。
かなちゃんとホマレンは、この学校始まって以来のダブルΩ副生徒会長。
片や、あの煌めき王子の菊川君にこよなく愛されるかな姫。
片や、微笑みの貴公子、ホマレン。

急に背後から現れたら、ビックリするで。
田栗先生にも、もしかしたらビックリしたんかもしれんけどな。

そうそう、去年、Ωのかなちゃんが生徒会に入ったことも茅野学園始まって以来のことやってんて。
バース性混在の学校やけど、Ωやって自分から言う人少ないもんなぁ。
これまでにも秘密でなってた人はいたんちゃうやろか。
このことは、去年中等部でも話題になってたって桂木君が言ってたっけ。
俺も実は変異種Ωやったし、今年の高等部の生徒会にΩが三人もいるってわかったら俺のことまでなんか騒がれるんやろか・・・ん、それはないな。
だって、俺には、かなちゃんやホマレンみたいにキャーキャー言われる要素ないもん。
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