ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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31 学園祭 side 渡

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菊川君には、俺がかなちゃんとおんなじΩになってたってことも、笹部君のことが好きなことも全部バレてるのに。
そんな俺でも、やっぱり気になるんやもんな。
かなちゃんをどんなときも、誰からも独り占めしたいなんて、愛されてる証拠やん。

俺、ほんまに部屋から出るで?って言おうとしたんやけど。
言う前に三回目の着信が来て、菊川君は後ろ髪を根こそぎ引っこ抜かれる瀬戸際みたいな顔で出ていった。


「かなちゃん、菊川君、あんなにしょんぼりしてたけど大丈夫なん?」

「ヤマはやりすぎなんだ。
もう14時を過ぎてるんだから急がないと。
終わりがけにハメを外す生徒や来校者がいるかもしれない」


プリプリ怒ってる風に見えるけど、かなちゃんはほんまに嫌がってるわけやないんやろな。
菊川君が出ていった扉を見る目はとっても優しいし、ツンと尖った口は照れてるんちゃうやろか。

去年は全然楽しめへんかった分、かなちゃんは今年の学園祭を大切にしてるんやもんな。
うん、最後まで楽しい学園祭にしたいもんな。
そやのに、巡回を代わってもらうなんて悪いことしてしもたなぁ。
笹部君のことは心配やけど、俺もついて行こうかな?
あ、それやとお邪魔虫?

俺が迷っている間に、かなちゃんは机の向こうの自分の席に回るとな。
まずは、ネコ耳を頭から取って。
後ろに手を回して、お尻から垂れてゆらゆらしてた尻尾の根本を持ったらしい。
パチンと外した音が聞こえた。


「それで、何があったんだ?
随分スッキリ・・・と言うか、あんなに思い詰めてたのに今はニヤニヤしてるぞ」

「ふぇ?」


油断してたから、変な声出てしもた。
そんなに顔に出てるんや。
俺は口元だけでは足りひんかったんやなって、両手で顔を隠してみた。


「今更、遅いだろう」


やんなぁ・・・
両手を下ろして照れ笑い。
かなちゃんは苦笑いしながら、タータンチェックのベストを脱いでブラウスのボタンを外し始めてた。
わぁ、あんなに菊川君が大事にしてるかなちゃんのお着替えを見るなんて、なんかドキドキしてしまうなぁ。
見んほうが、えぇやろなぁ。

俺は、ソファーの側にしゃがんで、ポケットからハンカチを出してな。
そーっと、笹部君の顔のマスクに隠れてへん見えてるとこに浮いてる汗を拭いてみた。
笹部君、眠りが深いんやなぁ。
ピクリともせぇへんわ。
ほんまに、保健室に運ばんでえぇんかなぁ。

こんなに近くで、じっくり顔見んの、初めてやしな。
しかも、こんな翳りがある笹部君の寝顔なんて想像すら出来ひんしな。

・・・俺、ほんまに、笹部君から好きって言ってもらったやんなぁ?

なんか、不安になってきたわ。
全然俺の言葉が届いてへんかったのに、何があったんやろ?
んー、あれから話す時間も無かったやん?
思い当たる節って、一個しかないんやけどなぁ。
そう言うことなんかなぁ。


「三枝?」


なかなか話そうとせぇへん俺に、かなちゃんはジレたらしい。
急かすように名前を呼ばれてしもた。
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