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31 学園祭 side 渡
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「三枝、今から着替えに生徒会室に行くんだよな?」
「うん」
机を拭き終わったかなちゃんに聞かれて、それに答えながら頷いたらな。
ちょっとこっちに来いって、仕切りの向こう側。
お客さんは入れへんとこに呼ばれた。
調理するのに使ってたスペースは片付けられてて、ゴミ箱の中身も空やし人も居らんかった。
調理室まで洗いもんに行ってくれてるんかもしれへん。
「笹部にまた何か言われたら、俺にも教えてくれと言うつもりでいたんだが・・・アレならその心配はあまりしなくて良さそうだ。
実は、今、笹部が生徒会室へ休みに行ってるんだ」
「えわっ、ん、さ、笹部君が?」
もうすぐ会うからな。
話そうと思ってた内容のおさらいをしとかなって、頭の隅では思ってたんやけど。
急に名前が出てきて、しかも、もぉ生徒会室に居るとか。
心臓が、キュッて縮んだわ。
あれ、でも、休んでるって?
首傾げたら、かなちゃんが深刻な顔で教えてくれてん。
「ここにもお前が来る前に来ていたんだが。
顔色が随分悪くてな。
なにか飲むかと言ってみたが、それさえ辛いのか断られてしまったんだ。
今頃寝込んでるかもしれん」
「そんなに?」
「あぁ、中等部からの付き合いだが、あんなにくたびれた笹部は見たことがない。
行くついでに、これで、ペットボトルの水でも渡しといてくれないか?
あと、巡回はアレでは無理だろうからな。
ヤマと俺とで交代になるかもしれない」
巡回が出来ひんって、よっぽどやない?
歩いて回るんも辛そうやったってことやろ?
かなちゃんはポケットからお金を出したんやけど、迷惑今までかけてばっかりやった俺が出すって断ってな。
そんで、みこちゃん達にまた後でって手ぇ振って。
直ぐに教室出て。
食堂の自販機で水を買って。
生徒会室まで一直線に来てんけど。
来てんけど。
あーうー、開けにくいっ
笹部君のことは心配やねんっ
めっちゃ心配で、どうしてんのか気になんねんっ
でも、どんな顔して会ったらええの?
俺が好きやって言ったあの日から、ほんまにまともに顔を合わせてへんねんで。
まだ、怒ってるままなんやろか。
俺が顔出して、体調悪くならんかな。
ソワソワ、ソワソワ
扉の前を行ったり来たりしてたんやけど。
そんなんしてる向こうで、笹部君が倒れてるかもしれへんやんって思ってしもたらな。
そっちの方が怖いってなって。
自分の想像が、かなちゃんの話からして可能性がゼロやないってことにもゾッとして。
思い切って、ノックしてみてん。
トントントン
ちょっと待ってみてんけど、なんにも反応が無くて。
恐る恐る叩いてしもたから、音が小さ過ぎたんかな?
もしかして、寝てるとか、た、倒れてるとか??
嫌な予感して、もう、開けてしまおうかって決意したんやけど。
『・・・開いてるぜ』
ボソボソッて、掠れた笹部君の声が聞こえて。
こんな、弱々しい声、初めて聞いてしもたからな。
それまで躊躇ってたんが、消えてしもた。
「えーっと、笹部君、あの、大丈夫?」
よっぽど悪いんやろかって、気は焦ってんのに扉を開ける手は慎重になる。
バンッて音出して、笹部を驚かせたり不快にさせたらあかんもんな。
でも、早く顔を見たい気持ちは抑えられへんから扉が完全に開くより頭だけ先に出てしもた。
「うん」
机を拭き終わったかなちゃんに聞かれて、それに答えながら頷いたらな。
ちょっとこっちに来いって、仕切りの向こう側。
お客さんは入れへんとこに呼ばれた。
調理するのに使ってたスペースは片付けられてて、ゴミ箱の中身も空やし人も居らんかった。
調理室まで洗いもんに行ってくれてるんかもしれへん。
「笹部にまた何か言われたら、俺にも教えてくれと言うつもりでいたんだが・・・アレならその心配はあまりしなくて良さそうだ。
実は、今、笹部が生徒会室へ休みに行ってるんだ」
「えわっ、ん、さ、笹部君が?」
もうすぐ会うからな。
話そうと思ってた内容のおさらいをしとかなって、頭の隅では思ってたんやけど。
急に名前が出てきて、しかも、もぉ生徒会室に居るとか。
心臓が、キュッて縮んだわ。
あれ、でも、休んでるって?
首傾げたら、かなちゃんが深刻な顔で教えてくれてん。
「ここにもお前が来る前に来ていたんだが。
顔色が随分悪くてな。
なにか飲むかと言ってみたが、それさえ辛いのか断られてしまったんだ。
今頃寝込んでるかもしれん」
「そんなに?」
「あぁ、中等部からの付き合いだが、あんなにくたびれた笹部は見たことがない。
行くついでに、これで、ペットボトルの水でも渡しといてくれないか?
あと、巡回はアレでは無理だろうからな。
ヤマと俺とで交代になるかもしれない」
巡回が出来ひんって、よっぽどやない?
歩いて回るんも辛そうやったってことやろ?
かなちゃんはポケットからお金を出したんやけど、迷惑今までかけてばっかりやった俺が出すって断ってな。
そんで、みこちゃん達にまた後でって手ぇ振って。
直ぐに教室出て。
食堂の自販機で水を買って。
生徒会室まで一直線に来てんけど。
来てんけど。
あーうー、開けにくいっ
笹部君のことは心配やねんっ
めっちゃ心配で、どうしてんのか気になんねんっ
でも、どんな顔して会ったらええの?
俺が好きやって言ったあの日から、ほんまにまともに顔を合わせてへんねんで。
まだ、怒ってるままなんやろか。
俺が顔出して、体調悪くならんかな。
ソワソワ、ソワソワ
扉の前を行ったり来たりしてたんやけど。
そんなんしてる向こうで、笹部君が倒れてるかもしれへんやんって思ってしもたらな。
そっちの方が怖いってなって。
自分の想像が、かなちゃんの話からして可能性がゼロやないってことにもゾッとして。
思い切って、ノックしてみてん。
トントントン
ちょっと待ってみてんけど、なんにも反応が無くて。
恐る恐る叩いてしもたから、音が小さ過ぎたんかな?
もしかして、寝てるとか、た、倒れてるとか??
嫌な予感して、もう、開けてしまおうかって決意したんやけど。
『・・・開いてるぜ』
ボソボソッて、掠れた笹部君の声が聞こえて。
こんな、弱々しい声、初めて聞いてしもたからな。
それまで躊躇ってたんが、消えてしもた。
「えーっと、笹部君、あの、大丈夫?」
よっぽど悪いんやろかって、気は焦ってんのに扉を開ける手は慎重になる。
バンッて音出して、笹部を驚かせたり不快にさせたらあかんもんな。
でも、早く顔を見たい気持ちは抑えられへんから扉が完全に開くより頭だけ先に出てしもた。
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