ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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31 学園祭 side 渡

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ずっと笹部君と気不味いままでな。
このままやと、あかん、あかんって思っててんけど近寄れへんくて。
学園祭で巡回当番が一緒になったし、そこでもう一回ちゃんと話そうって思っててん。

食堂での俺の言い方が、冗談に聞こえてあかんかったんかなとか。
俺が知らんだけで、αにβが好きって言うのは厚かましいとかあるんかなとか。
なんか、誤解があったと思っててん。

あんなに怖い笹部君、初めて見た。
生徒会室でフェロモンコントロールがうまく行かへんかったときより、食堂でぶつけられたフェロモンの方がめちゃくちゃ怖かった。

小説の中でな、フェロモンってめっちゃ大事なとこで使われるし。
そんなん出せへん俺には、ここに書いてるフェロモンってどんなんやろぉって想像することしか出来へん。
イメージはすんごいあやふややってん。

茅野学園に入ってからは、菊川君の甘いのとか、桂木君のどうしてえぇかわからへんくすぐったくて困ってしまうのとか。
俺、そういうのは知って感じたこともあってんけど。
あんなに・・・あんなに身体が震えるくらい怖いのは初めてで、死にそうやった。

でも、それよりも、俺の言葉が全然届いてへんのが堪えてた。

好きって、言うつもりはあのときは無かってんで。
でも、ついやとしてもな。
笹部君に言えたんやし、ちゃんと伝えたかってん。
昔の記憶はなんも残ってへん俺やし、笹部君に取ったら、同級生のβでしかも手がかかるヤツって思われてるやろなぁって。
あそこで誤魔化したら、恋愛対象圏外の俺には、もうチャンスは無いと思ってん。

βの男から好きやなんて、な。
気持ち悪いって思われるかもしれへんって怖くはあったんやで?
でも、俺の知ってる笹部君やったら、きっと困った顔はしても聞いてくれるって思ってん。
せやし、否定されても「嘘やないもん」って言えた。
そのまま、「笹部君のこと、恋愛の意味で好きやねんっ」て続けて言おうとして。

でも、そこにおったんはとても言えるような笹部君やなくて。

帰ってから、おかんにもおとんにも心配されたけど、なんも食べれへんし、寝れへんし。
二日目の体育祭で、俺があげた帽子を修学旅行で被ってた女の子と仲良くしてんの見てしもて。
やっぱり、今の俺やと笹部君には選んでもらえへんのかなってしんどかった。

昔のこと、きっと気にしてる笹部君にはな。
後悔とか、義務とかで俺を選んで欲しくなかってん。
確かに、Ωになってたんはショックやけど。
きっと、そのときの俺も、今の俺と変わらへんくらい笹部君のことが好きやったんやって思えるねん。
これな、結構自信があんねんで。

俺、全然泳げへんかったし、プールに入るのも怖かって毎回大騒ぎしてたのにな。
笹部君は、根気良ぉ教えてくれた。
笹部君、目つきが悪いから誤解されがちやけどな。
からかってるときの意地悪い笑顔とか、俺が失敗したことにウケて爆笑してるときの笑顔とか。
あと、俺にわかりやすいように、真剣に説明の仕方を考えてくれてるときの顔とかな。

めちゃくちゃ可愛いし、格好えぇねん。
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