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30 学園祭 side 陸
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俺に手を捕らえられた三枝は、怯えてなどいなかった。
αにとっては、相手への敵意や支配欲の顕れ。
牙を持たないβにとっては、明確な優劣の差を植え付け。
Ωにとっては、自分に永遠の拘束、番を刻むものであるのに。
三枝が、身を引いたのは一瞬。
俺の牙が目に入った途端、じっくり見ようと寧ろ顔を寄せてくる。
しかも、口元を緩めて。
興味を隠そうともしない瞳はキラキラと輝き、興奮して息を乱す俺を映す。
あぁ、これが三枝だよな。
素直で、表裏が無く、警戒もせずに懐に飛び込んでくる俺のΩ。
したこと、強いたことを謝らなければと歯を食いしばり構えていたのに、こんな三枝の顔を見ると気が緩む。
言わなければならないことよりも、三枝へ伝えたい気持ちに引っ張られる。
緩んだ俺の口を、胸を、突いて出た言葉は。
「三枝、好きだ」
今日、自覚したばかりの想い。
言葉にすれば、短い。
だが、こめた気持ちは深く、熱がこもる。
三枝の発情フェロモンに高鳴る鼓動が、更に早まり気持ちを昂ぶらせた。
息を呑み、俺を見つめる三枝。
息が乱れ、身体はクラクラと発情フェロモンに酔っていて。
これが三枝から出ているのだと知ってからは、もっと味わいたい欲が俺の中で膨れ上がっていた。
だが、それよりも今は伝えたい気持ちが上回る。
お前がカッキーだったんだな。
もう、俺の手でΩにしていたんだから、去年のあのチョコレートで兆候が現れる筈がなかったんだな。
同性のβ相手に、この俺が嫌われてんのに惹かれたまんまとか。
それを認めるのが怖くて、苛立ちをぶつけ、酷い言葉を投げ付けた。
俺の突然の告白に、三枝の瞳がゆらりと感情の波に押されて揺らいだ。
思いがけない言葉で、きっと戸惑わせてるよな。
三枝が口にした同じ言葉を、否定したくせに。
そんな俺から好きとか言われても、困らせるだけだ。
ごめんな。
お前の人生を狂わせた俺が、何を言うんだって話だよな。
でも、それをわかっていても止められなかった。
それに、これで終わりじゃねぇ。
カッキーと再会することが出来たら。
そして、万一、赦して貰えたなら。
告げてみたいと願っていた言葉。
それを、カッキーだと気付かずに惹かれたお前に言えるんだな。
あぁ、ダメだ。
どれだけ場違いだと、我慢しなければと思っても、嬉しく笑ってしまう。
告げることが出来る喜びで、指先だけじゃなく魂までもが震えているようだった。
「・・・俺の、番になってくれ」
喉奥から振り絞った言葉は、目尻から流れた涙と共に零れ落ちた。
αにとっては、相手への敵意や支配欲の顕れ。
牙を持たないβにとっては、明確な優劣の差を植え付け。
Ωにとっては、自分に永遠の拘束、番を刻むものであるのに。
三枝が、身を引いたのは一瞬。
俺の牙が目に入った途端、じっくり見ようと寧ろ顔を寄せてくる。
しかも、口元を緩めて。
興味を隠そうともしない瞳はキラキラと輝き、興奮して息を乱す俺を映す。
あぁ、これが三枝だよな。
素直で、表裏が無く、警戒もせずに懐に飛び込んでくる俺のΩ。
したこと、強いたことを謝らなければと歯を食いしばり構えていたのに、こんな三枝の顔を見ると気が緩む。
言わなければならないことよりも、三枝へ伝えたい気持ちに引っ張られる。
緩んだ俺の口を、胸を、突いて出た言葉は。
「三枝、好きだ」
今日、自覚したばかりの想い。
言葉にすれば、短い。
だが、こめた気持ちは深く、熱がこもる。
三枝の発情フェロモンに高鳴る鼓動が、更に早まり気持ちを昂ぶらせた。
息を呑み、俺を見つめる三枝。
息が乱れ、身体はクラクラと発情フェロモンに酔っていて。
これが三枝から出ているのだと知ってからは、もっと味わいたい欲が俺の中で膨れ上がっていた。
だが、それよりも今は伝えたい気持ちが上回る。
お前がカッキーだったんだな。
もう、俺の手でΩにしていたんだから、去年のあのチョコレートで兆候が現れる筈がなかったんだな。
同性のβ相手に、この俺が嫌われてんのに惹かれたまんまとか。
それを認めるのが怖くて、苛立ちをぶつけ、酷い言葉を投げ付けた。
俺の突然の告白に、三枝の瞳がゆらりと感情の波に押されて揺らいだ。
思いがけない言葉で、きっと戸惑わせてるよな。
三枝が口にした同じ言葉を、否定したくせに。
そんな俺から好きとか言われても、困らせるだけだ。
ごめんな。
お前の人生を狂わせた俺が、何を言うんだって話だよな。
でも、それをわかっていても止められなかった。
それに、これで終わりじゃねぇ。
カッキーと再会することが出来たら。
そして、万一、赦して貰えたなら。
告げてみたいと願っていた言葉。
それを、カッキーだと気付かずに惹かれたお前に言えるんだな。
あぁ、ダメだ。
どれだけ場違いだと、我慢しなければと思っても、嬉しく笑ってしまう。
告げることが出来る喜びで、指先だけじゃなく魂までもが震えているようだった。
「・・・俺の、番になってくれ」
喉奥から振り絞った言葉は、目尻から流れた涙と共に零れ落ちた。
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