ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
739 / 911
30 学園祭 side 陸

34

しおりを挟む
あー、コレは、アレか?
都合が良い夢か?
一瞬頭を過った仮定に半笑い。
カッキーが三枝とか、そんなんねぇだろう。
願望にすら出てこねぇーわ。

きっと、そう、きっと。
ぶつかったとかじゃなくて。
なんか物を預かってるとか、あぁ、それでもこんなに次から次へと流れてくんのは不自然だが。
だけど、きっと他の理由があるに、そう、あるに決まってるさ。

三枝を見ると、自分の机に座って頭の上で揺れていたウサ耳と金髪のウイッグを外し、誰かに借りたのか卓上の鏡を覗き込んでシートを使ってメイクを落としていた。
俺の視線に気付いて、顔を上げる三枝。


「・・・わっ、さ、笹部君、あの、急ぐし待ってな??」


緊張で顔を強張らせ、慌ててその場に立ち上がる。
膝裏で押されたキャスター付きの椅子が背後にカラカラ動いた。
三枝は、椅子をそのままにして机と椅子の間に出来た空間でエプロンを外しにかかる。
壁掛け時計は、14時まで残り三分を示していた。

そうだ。
カッキーにこんな訛りは無かったし。
だいたい、カッキーがわざわざ俺に近付いてくるわけがねぇ。
自分から発情期になりにくるとか、有り得ねぇだろう。
無視して、遠ざけて、関わらないように転校していくさ。
それに、三枝はあの夏休みのことを話にも出さねぇし、これまで匂わせても来てねぇし。

ナイナイと。
いくら現実味がなさ過ぎると否定しても。

行き着いた仮定は頭から消えない。

口元を隠していた右手に力が入り、両頬に指が食い込む。
その下で、俺の牙は完全に伸び唇にチクチクと刺さっていた。
何も知らず着替えを続ける三枝を、押し倒し、味わい、噛みつきたい衝動が強く突き上げてくる。
三枝が俺のΩなんだと、身体がはっきりと告げ、あんだけ疲れてたってぇのに股間は膨らみ熱が溜まる。

いやいや、有り得ねぇ、有り得ねぇっ
そんなん、可笑しいだろう?
どんだけ良い夢見てんだよ?
あぁ、これは、ぜってぇに夢だ。
夢に、決まってる。
早く、目が覚めねぇと、いよいよ三枝の顔を見れなくなるぜ。

あぁ、でも、どうせ夢なら。

現実で、カツカツの体力気力でやんのはきついが。
良い夢を、極めてみたい。
欲望のまま匂いを可視化し、た、途端。
理性がぶっ飛びそうになった。
目の前にいるのは、全身から、匂いを放つ薄い霧を纏った三枝。
興奮で息が乱れ、直ぐに可視化を解いても残像が頭に残り収まらねぇ。

俺が変異種Ωにした張本人だって知っていて、俺が好きだと言ってくるかよ。
あぁ、夢見が良過ぎて逆に辛え。
痛々しい、夢にまですがる俺が情けねぇ。

過呼吸になりそうな俺の前で、三枝はバサッと床にワンピースを脱いで落とした。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...