ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
719 / 911
30 学園祭 side 陸

14

しおりを挟む
かなちゃんの勘違いを利用して、開始からここまでのルートを聞き出そうとしたんだが。
俺も走りながら聞いていた菊川のマイクを使った挨拶。
その後、まず向かったのは自分達の教室。
わざわざ顔出しに行ったらしい。
そして、早々に廊下に出来た順番待ちの行列に喜んでいたら、菊川の兄貴が最後尾に加わったことで大騒ぎへ発展。
そこで交通整理と整理券の配布をしてたのだと言う。


「コレがウケるのかどうか、疑問もあったんだがな。
他のクラスの追随を許さないくらいの大盛況だったぞ。
お前のクラスも和風喫茶で検討はしていたがな」


フフンと、得意気なかなちゃん。
菊川の兄貴をひと目見ようと集まってきた人間と、列に並んでいた人間。
この2つの境目がわからないくらい廊下に人が溢れたそうだ。
「一旦落ち着いた筈だが、お前も注意しておいてくれ」とかなちゃんは至極真面目に巡回のアドバイスをしてくる。

菊川の兄貴には、世代も違うし、直接会ったことはねぇが。
確か職業がモデルとかデザイナーとかだったか?
まぁ、菊川の兄貴ってだけで優生αなのは確実。
こんなβの多い場所に来たら、騒ぎにもなるか。
わざわざ弟の学園祭に顔出して、しかも行列に並ぶとか。
菊川の家は、変わったαが育つんだな。
芝浦や柴田の芸能活動をしているα目当てに、菊川の兄貴が並ぶ前から人は集まっていたんだろうが。

のっけから怪しいじゃねぇかと、1つ目の行き先が決まる。
だが、他にもあるかもしれねぇしな。
続けて「他は?」と聞いたんだが。
口を開いたかなちゃんが、中庭の鐘楼についてる時計が10時半を回っていたことに気付いて。


「うわっ、大変だぞ、ヤマっ
『ロミオとジュリエットがいっぱい』が始まっているっ
田栗に観に来てほしいと言われていたのにっ」


そこから俺のことは完全無視。
菊川の腕を引っ張り、振り返りもせず去っていった。
おい、挨拶も無しか。
かなちゃん、俺の扱いがどんどん雑になってるよな。

別れる前に、残り香をもう一度嗅がせて欲しかったんだが、追いかける前にこのタイミングで菊川の所有フェロモンが目の前で追加される。
「可愛い」「大好き」「宝物」「俺の物」
鼻が溶けそうな甘ったるさに、思わず息を止めた。
これは、もう完全に消されたな。

どう見ても、引っ張られたくてわざと遅く走ってる菊川が、渡り廊下に戻る前にチラッと俺を振り返る。
へぇ、へぇ、わかってるって!
かなちゃんが学園祭をめぇいっぱい楽しむのが最優先なんだろう?
観てる間は、探しながらついでに巡回も兼ねとくよと手を振っておいた。

さて、移動するか。

今から二年四組に行っても、そこに俺のΩがいる保障なんてねぇが。
そこにしか、今の俺が辿れるモノが無い。
行けば、居るかもしれない俺のΩ。

闇雲に探していたときよりは、望みがあるこの状況に気持ちが上がる。
そう、思っていたんだが。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...