ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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30 学園祭 side 陸

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「あー、で、だ。
俺が聞きてーのは、ここまでに誰かとぶつかるくれぇ、混んでた店があったのかってことだ」


のっけからピンポイントで誰とぶつかったのか聞いてもなぁ。
かなちゃんが益々警戒して、答えるまでにアレコレこっちに質問してきそうだしな。
ジトリと俺を見てくるかなちゃんの目は、確実に俺を不審人物と特定している。
まぁ、怯えられて菊川の不興を買うよかはマシだ。


「はぁ?
なんでそんなことを気にするんだ?
お前の巡回時間はまだだぞ」


普段の俺は、それほど生徒会の仕事に熱心でもねぇし最低限のこと以上の期待もされてねぇからな。
かなちゃんは、心底不思議そう。
はぁ、この聞き方では引き出せ無かったか。
まどろっこしいことはやめて、直球しかねぇなと聞き直そうとしたんだが。


「あぁ、なるほど。
お前にも、少しは学園祭を盛り上げようという役員としての心構えが芽生えたと言うことか。
ヤマの学園祭評価は、今年で決まるからな。
必ず成功させるためにも、トラブルになりそうなところを自主的に見回るのは良いことだ」


なぜか、かなちゃんはそこからうんうんと一人で納得。
勝手に『役員として頑張る俺』という終着地点を決めつけて飛び降りていた。

まぁ、普通はな。
去年、本人がフェロモンレイプにあって病院搬送。
一応学園祭は滞り無く終わったものの、失敗はしていないが成功と呼ぶには微妙なところだった。
菊川の生徒会長としての対外評価も、微妙、つーか、保留だったしな。
菊川の名誉のためにも、今年は成功させなきゃなんねぇと群れの俺達が動こうとしてる推測は王道として成り立つ。

当の菊川は、なんにも言わずにかなちゃんをニコニコ愛でている。
かなちゃんの身体が動けば、合わせて左右に揺れる尻尾。
あとは、頭の耳付きのカチューシャが嗜好に合ったのか?
まぁ、これは菊川の通常モードだしな。
かなちゃんなら、何したってコレか。

おい、そこの色ボケリーダーは、お前のためにこの学園祭を成功させようとしているだけで、自分の評価なんか微塵も気にしてねーよ。

『菊川のために動く俺』を心の中に勝手に作り上げ、ヨシヨシと俺を見直して笑うかなちゃんにそう言ってやりてぇわ。
菊川を叱り、αとしてどう振る舞うべきか説教の一つも始まりそうでしねーけどな。

まぁ、かなちゃんはαのふりをしていただけあって、菊川のαとしての評価も気にする賢さがある。
かなちゃんを喜ばせたい菊川が、かなちゃんの望みに合わせて動くことは多い。
結果、菊川の評価は上がっている。

今までの、なんにもしねぇで寝ているだけだった菊川を動かしてんだし、その下に付いてる俺達としては、かなちゃんには感謝だ。
菊川への目に余る態度も、菊川が喜んで受け入れてるからスルーで済ませることにも慣れた。
このまま上手く菊川を本気にさせて、神輿を担ぐ俺達の気を晴れさせてくれよ。
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