ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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30 学園祭 side 陸

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だぁーーーーーーーーーーーーっ

ぜんっっぜんっ、わっかんねーーーーーーっ


中庭のベンチに腰掛け、天を仰ぐ。
記憶に刻みつけた俺のΩの発情フェロモンの匂いを反芻すれば、牙がギシギシ軋むくらい飢えて必死に探してんのに。
なんで、欠片も残ってねーんだよっ

あの後、校門の周辺を探ったが、どの方角に進んでも匂いが途切れて辿れなかった。
細い蜘蛛の糸みてぇな、集中してねぇとすぐに他と紛れて消えていく微弱な発情フェロモン。
手繰り寄せてもその先は続かず、途中でフツリとまるで元から何も無かったみてぇに消えていた。

初めて気付けた校門と同じくらいの匂い。
あのわずかでもいいから、知覚できるレベルで俺のΩがいる場所まで残ってんなら、巡回までに探せると希望を持ってたのに。
ここまでなんにも残ってねぇと、見つかる確率の低さにばかり気がいってしまう。

あーーーっ、暗く考えんな。
空が近くにいたけどなんの反応も出なかったくらい、発情期までまだ余裕があるってことは。
よっぽど鼻が良くなけりゃ、他のαにも気付かれねぇ。
万一気付かれて襲われて噛まれても、だ。

番は成立しねぇ。

・・・ダメだ。
他のαに先を越されるとか。
考えただけで牙が伸びる。
絶対に誰よりも先に見つけねぇと。
くっそっ、匂いに敏感なことに困ったことはあっても、こんだけたった一つの匂いに集中してんのに追えねぇなんて。

見上げた空には雲がまばらに浮かんでるが、雨は降りそうにねぇなぁ。

集中し過ぎて頭痛までしてたからな。
力を抜いて、ぼんやりと空を眺める。
既に一般人も敷地内に入ってきてるから、益々探しにくくなるってのに。
あ"ーーーっ、開門までに見つからねぇとか最悪だ。

唯一の収穫は、本部テントの脇に置いてあった掃除用具に発情フェロモンの匂いが微かに残っていたことだ。
周辺掃除に使ったらしいが、あれに残ってるってことは俺のΩは学園関係者に絞られる。
街ん中を闇雲に走り回らないだけでもマシだ。
学園祭の最中は、基本敷地内に留まってるだろうからな。
俺のΩは、今もこの学園の何処かにいるはずなんだ。

校門に他と比べて匂いが強く残ってるってことは、滞在時間が長かったとみて間違いねぇ。
なのに。
本部テントの設営担当だった空は、手伝わせた生徒や教師の名前を覚えてなかったし。
「えーっと、空ちゃんとワタルンとその辺歩いてた人とあとホマレンのファンだよ」って、全然絞り込めねぇよっ
あの場にいた松野も、警備担当でそこまで気にしてなかったし。
記憶力が良い菊川は、掃除をしていた時間にその場にいなかったから頼りに出来ねぇし。

なんか、呪われてんのか?
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