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30 学園祭 side 陸

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かなちゃんと番になってからは、今までの変わったαを上回るおかしな行動に出ていたが。

そんなに、かよ。

菊川が人事を尽くすって、それは。
どんなアクシデントが起ころうが、この学園祭を成功させることは決定事項。
そのために動けという命令に等しい。

無理強いするようなヤツじゃねぇし、恐らく菊川本人もそこまでは意識してねぇんだろうが、だ。
ここまで有無を言わせないプレッシャーは、今まで感じたことがないレベル。
無意識だろうが、拒否を許さねぇ。
フェロモンを出されて強要されていたら、周りに気を失う人間が続出してただろうな。

群れに属する俺にとっちゃ、どんな手段を取ろうとそれをやり遂げなきゃならねぇ。
従属を誓った魂の楔。
今まであるかないかもわからないくらい、緩く軽くしか結ばれていなかったソレが。
ここに来て、何ものにも変え難い俺のΩの、しかも発情フェロモンを嗅ぎ分けた奇跡が起きた日に。
最大級の力を行使してきやがった。

俺が学園祭を抜けて、その間に何かことが起これば。
それが万一かなちゃんの思い出にヒビの一つ、いや、曇るくらいでもアウトだろうな。
楽しい思い出として学園祭を感じられなくなる何かが起これば。

目の前の菊川を見ていると、それを想像するのもヤバイとわかる。
菊川に牙を抜かれる覚悟で挑まなきゃならねぇ。

そして、誉が新生徒会長として相応しいのだと認めさせるためには、誉に関わるものでの失敗も許されねぇ。
だから、か。
かなちゃんでは無く誉に終了宣言の大役を任せ、その前のアレに空と海を従えるような演出を付け加えたのは。
なんで誉なんだと、あのときは松野も竹居も首を傾げていた。

あー、なんでよりによって重なんだよっ
どんなことがあっても、今日の学園祭を成功させるのが最優先。
しかも、かなちゃんの過去と未来のためにって。

初めて、群れの縛りに、菊川の群れに属したことに後悔する。
俺が抜けることが、学園祭の懸念材料になんのは確実。
今からここで群れを抜けると言っても、あっさり許してくれそうにもねぇ。

この間に消えかかってる発情フェロモンを、さっさと追うのが先決だな。
巡回担当時間は、14時から16時の二時間。
それまでに俺のΩを見つければいい。

気持ちを切り替え、「わかった」と頷けば。
俺の了承に、菊川が「そうか」と緩く微笑む。
厄介なリーダーの下についたもんだな、俺も。
ため息をつく俺を尻目に、菊川はさっさと話を進める。


「巡回時間までは、探すことに集中してて良い。
14時に・・・そうだな。
生徒会室で落ち合え。
三枝に鍵も渡しておく」


なんでわざわざ生徒会室なんだと不思議に思ったが、去年三枝が朝から追いかけられて逃げ込んだのもそこだった。
また追いかけられることを気にしてやってんのか、って、それより当然かなちゃんを心配させ無いためか。
一人納得して、この場に残される空が泣きそうにはなってたが「頑張れよ」と励ましその場から匂いを辿っていく。

消えかかった匂いは、校門の周辺、歩道、学園の敷地内に点在するように残っている。
校門を中心に広げていって、徐々に濃く残ってる方角を探るしかねぇか。
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