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30 学園祭 side 陸
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菊川の掌が視界を遮り、気がそちらに逸れる。
その一瞬の隙きをついて、菊川の練られたフェロモンが、まるで弾丸のように額から直接頭を撃ち抜いた。
実際の打撃力はないが、精神に打ち込まれた衝撃が強過ぎて頭が仰け反る。
「え、ちょ、カイチョー??
兄ぃに、ナニしたんですか?!」
咄嗟に背後に周り俺を支えに来た空。
あ"ーーーっ、ワーワー耳元で騒ぐなっ
歓喜に染まっていた頭に風穴を開けられ、思考はスッキリしたが。
菊川の俺を鎮圧するために打ったフェロモンが、後から重たい枷となってズシリと頭に伸し掛かってくる。
なんつー技、もってやがんだ。
これだけ近くにいる空には、余波さえ感じさせてねーのに。
空に支えられながら頭を抑え、呻く。
いくら群れのリーダーとして認めていても、実力の差はねーと思ってたのに油断してた。
菊川は、元々好戦的じゃねーからな。
敵対する相手でも、出すのは緩い縛りを求めるか、軽い威圧フェロモン。
攻撃するところなんて、これが初めてじゃねぇか?
その相手が、暴走しかかった俺とか。
あー、情けねぇ。
こんな器用なことまで出来んなら、同世代は敵無しじゃねぇか。
「悪い、やり過ぎたか?」
「いや、これくらいじゃねぇと、ヤバかったから助かった」
あのままの俺だと、自分の番のことしか考えられず、タガがはずれた状態で何をしでかしていたか。
諦めていた俺の番の、しかも発情フェロモンが目の前に突然現れたからな。
それを求めることしか、頭になかった。
ここを飛び出して相手を見つけたら、その場で否応なく襲いかかっていたかもしれねぇ。
んなことになったら、俺のΩは自殺ルート一直線。
俺のΩになったせいで、死ぬ、なんて。
しかも、俺がとどめを刺したのと変わんね ぇ、とか。
絶対に、そう、絶対に。
そんな事態は避けねぇと。
だが。
正気に戻ったつもりではいても、知覚した発情フェロモンを忘れたわけじゃないからな。
感情の昂ぶりは抑えられない。
空気に混じった微かな匂い。
その先に、俺のΩが居る。
「兄ぃ、本当にどうしちゃったの?
あんな怖い兄ぃ、見たことないよ」
「わりぃ、わりぃ」
空から身体を話し、喰らった攻撃の後遺症が無いことを確認。
よし・・・
「菊川、空」
名前を呼んだだけで、ただならぬ雰囲気を感じたらしい。
二人と海は、俺がやらかしたことを知ってるからな。
「俺のΩの発情フェロモンの匂いが、うっすらとここに残ってる」
そう言えば、事の重大さは伝わるだろう。
空は、一瞬笑顔になったが慌ててキュッと口元を結び真面目な顔を作り。
菊川は、「・・・へぇ」と無感動に相槌。
おい。
いくら笹部の人間じゃなくても、もっと、こぉ、なんかあるだろう?!
その一瞬の隙きをついて、菊川の練られたフェロモンが、まるで弾丸のように額から直接頭を撃ち抜いた。
実際の打撃力はないが、精神に打ち込まれた衝撃が強過ぎて頭が仰け反る。
「え、ちょ、カイチョー??
兄ぃに、ナニしたんですか?!」
咄嗟に背後に周り俺を支えに来た空。
あ"ーーーっ、ワーワー耳元で騒ぐなっ
歓喜に染まっていた頭に風穴を開けられ、思考はスッキリしたが。
菊川の俺を鎮圧するために打ったフェロモンが、後から重たい枷となってズシリと頭に伸し掛かってくる。
なんつー技、もってやがんだ。
これだけ近くにいる空には、余波さえ感じさせてねーのに。
空に支えられながら頭を抑え、呻く。
いくら群れのリーダーとして認めていても、実力の差はねーと思ってたのに油断してた。
菊川は、元々好戦的じゃねーからな。
敵対する相手でも、出すのは緩い縛りを求めるか、軽い威圧フェロモン。
攻撃するところなんて、これが初めてじゃねぇか?
その相手が、暴走しかかった俺とか。
あー、情けねぇ。
こんな器用なことまで出来んなら、同世代は敵無しじゃねぇか。
「悪い、やり過ぎたか?」
「いや、これくらいじゃねぇと、ヤバかったから助かった」
あのままの俺だと、自分の番のことしか考えられず、タガがはずれた状態で何をしでかしていたか。
諦めていた俺の番の、しかも発情フェロモンが目の前に突然現れたからな。
それを求めることしか、頭になかった。
ここを飛び出して相手を見つけたら、その場で否応なく襲いかかっていたかもしれねぇ。
んなことになったら、俺のΩは自殺ルート一直線。
俺のΩになったせいで、死ぬ、なんて。
しかも、俺がとどめを刺したのと変わんね ぇ、とか。
絶対に、そう、絶対に。
そんな事態は避けねぇと。
だが。
正気に戻ったつもりではいても、知覚した発情フェロモンを忘れたわけじゃないからな。
感情の昂ぶりは抑えられない。
空気に混じった微かな匂い。
その先に、俺のΩが居る。
「兄ぃ、本当にどうしちゃったの?
あんな怖い兄ぃ、見たことないよ」
「わりぃ、わりぃ」
空から身体を話し、喰らった攻撃の後遺症が無いことを確認。
よし・・・
「菊川、空」
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二人と海は、俺がやらかしたことを知ってるからな。
「俺のΩの発情フェロモンの匂いが、うっすらとここに残ってる」
そう言えば、事の重大さは伝わるだろう。
空は、一瞬笑顔になったが慌ててキュッと口元を結び真面目な顔を作り。
菊川は、「・・・へぇ」と無感動に相槌。
おい。
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