ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
706 / 911
30 学園祭 side 陸

1

しおりを挟む
巡回以外のことは、菊川が調整を約束してくれたおかげで三枝と直接顔を合わせることなく学園祭当日を迎えた。
正直、三枝を前に冷静でいられるか怪しい。
食堂の一件から半月は経っていたが、桂木が横槍を入れてきたせいであの日に怒鳴ったことやそれまでのことまで夢に出て来てる。
とんだ悪夢だ。

繰り返し、繰り返し、もしかしたら好かれてるのかと勘違いして、三枝の涙に困惑して後悔して、二人で泳いだことを思い出して。
時系列がグチャグチャで、見るたびに感情がイヤッてほど揺さぶられる。

あんなヤツに言われたくらいで、ガタつくような柄じゃねーんだが。
夢見がわりぃ。
ハッキリと、三枝がΩにならなかった、つまりは俺に微塵の好意がねぇことは確定してんのに。
もしかして、とか。
目が覚めても、有り得ねぇのに考えそうになる。
考えたところで、現実は変わらねぇのに。
あの、三枝のことを信じ切った桂木の目のせいか。

あーーーっ、巡回時間が億劫で仕方ねぇ。
こんなことなら、誉にしたほうがマシだったか?
・・・あ"ーーーっ、無理だろっ
あんなんと歩いて、声を掛けるたびにクソさみぃセリフを背後で吐かれてたら鳥肌が立つ。

巡回自体は、まぁ、楽なもんだ。
この場に生徒会役員が居て、目を光らせていると周りにわかればいいからな。
適当に学園祭を遊んでんのと見た目は変わらねぇ。
特に威嚇して歩くことも必要ねぇし、逆にんなことしたら学園祭に水を差すしな。
フェロモンをドギツく出すようなαをこっちは取り締まる側だ。
菊川とかなちゃんの二人なら、生徒会公認でデートしてるようなもんだな。

巡回担当時間外も、役員は生徒会の腕章をつけたまんまなんだが、担当時間中と何が違うのかといえば意識して歩く距離を伸ばすか好きなとこだけウロウロするか、と言うだけだ。
トラブルが目に付けば、時間外でもその場にいた役員が対応する。

今年は、新設した風紀委員も抑制剤のキットと腕章をつけて学園祭に参加するし監視の目が増えてる。
それに、去年のフェロモンレイプの顛末は開示されてる。
あんな無茶をやらかすバカは、現れねぇだろう。
もし出たら、溜まりっぱなしのストレス解消に俺が裏に連れて行って相手をしてやるんだがな。

菊川からは、三枝をギリギリまで避けてーなら、他の役員より早い8時半から打ち合わせをするって融通してくれたからな。
菊川を待たせるわけにも行かねーし、あくびを噛み殺して気持ち早めに出てきたんだが。


「おい、空、なにやってんだ?」


校門前で座り込んでる空を見つけ、足が止まった。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...