705 / 911
29 学園祭
20
しおりを挟む
「わっ、カッワイーーーッッ」
どうやら打ち合わせが終わったらしく、三人の輪から海が外れてこちらに走ってやってくる。
と、そのままの勢いで両手を広げて三枝に突撃。
その豊満で揺れる胸に抱きしめた。
油断していた三枝は、海の胸に顔が埋まりそのままホールド。
海の場合、ツナギの前面にあるジッパーが規格外の胸のせいで途中で止まり首元まで上げられていないからな。
直に胸の谷間に鼻が刺さったこの状況に、待機している人から「うわぁ」と羨ましそうな歓声まで漏れてくる。
海としては、グリグリ自分の頬を三枝の頭に擦り付けてじゃれついているつもりなんだろう。
「イヤーンッ、三枝センパーイ、サイコーッ
噂には聞いてたんだけど、すっごい可愛い~」
「んんっ」
「写真不許可なんて、勿体無いよぉ。
ねっ、ねっ、終わってからで良いから、海ちゃんと写真撮ろうっ」
「ふあっ、ふわっ」
海の胸で溺れている三枝に、その声が届いているようには見えないぞ。
ジタバタ四肢を動かし顔を真っ赤に染めた三枝は、窒息する前になんとか脱出。
海からフラフラしながら一歩離れ、ビシッとはいかなかったが険しい顔を作って注意した。
「うううう海ちゃんっ、慎んでっ」
呼吸困難なのか、興奮してなのか、息も絶え絶えだ。
傍から見ると、ウサ耳を着けたワンピースの少女と、プロポーション抜群なのにやや男勝りに見えるαの特徴がハッキリ表に出た女子のハグ。
目撃した人間は、この異色のカップルにザワザワしているが皆笑顔だ。
中にはもっと見たかったのか、離れた二人に「もう一回見たい」とコールする声まで聞こえてくる。
学園祭前の余興と思われていないか?
「エー、抱きしめちゃダメェ?
三枝センパイ、海のことキライ?」
「え?
そんなことないし、あと、抱きしめたらあかんとかやなくて、その、抱きしめ方があかんていうか。
えーっと・・・」
シクシク泣き真似まで始めた海に、根が良い三枝は一生懸命言葉を探し始める。
三枝じゃ、海に太刀打ちできないな。
面白がって手を出さない竹居と空は、近寄りもせずにニヤニヤ見ているだけだ。
「空、海を止めて・・」
くれないか、と俺は続ける筈だったんだが。
声を掛けた俺と目が合った途端、空は何故か三枝を上回る勢いで全身を真っ赤に染め、しかも額に汗まで浮かべてパクパクと口を開閉して狼狽える。
ん、なんだその反応は?
俺のこの格好は、さっきも見ていたしなんでそんなふうになるんだ??
「おい、空?」
「あー、ダメダメッ
あの、桜宮センパイ、空の一生のお願いだから、今日は空に近づいちゃダメーーーッ」
両手で顔を覆い、その場に座り込む空。
竹居も唖然。
え、なんだ?
なんでそんなことを俺は言われるんだ?
この直後、校門前の騒ぎに顔をしかめた松野から、さっさと集合しろと呼ばれて有耶無耶になったが。
結局笹部は現れず、それに誰も何も言わず、打ち合わせが終わるまで空は俺から身を隠すように海の背中から出て来なかった。
どうやら打ち合わせが終わったらしく、三人の輪から海が外れてこちらに走ってやってくる。
と、そのままの勢いで両手を広げて三枝に突撃。
その豊満で揺れる胸に抱きしめた。
油断していた三枝は、海の胸に顔が埋まりそのままホールド。
海の場合、ツナギの前面にあるジッパーが規格外の胸のせいで途中で止まり首元まで上げられていないからな。
直に胸の谷間に鼻が刺さったこの状況に、待機している人から「うわぁ」と羨ましそうな歓声まで漏れてくる。
海としては、グリグリ自分の頬を三枝の頭に擦り付けてじゃれついているつもりなんだろう。
「イヤーンッ、三枝センパーイ、サイコーッ
噂には聞いてたんだけど、すっごい可愛い~」
「んんっ」
「写真不許可なんて、勿体無いよぉ。
ねっ、ねっ、終わってからで良いから、海ちゃんと写真撮ろうっ」
「ふあっ、ふわっ」
海の胸で溺れている三枝に、その声が届いているようには見えないぞ。
ジタバタ四肢を動かし顔を真っ赤に染めた三枝は、窒息する前になんとか脱出。
海からフラフラしながら一歩離れ、ビシッとはいかなかったが険しい顔を作って注意した。
「うううう海ちゃんっ、慎んでっ」
呼吸困難なのか、興奮してなのか、息も絶え絶えだ。
傍から見ると、ウサ耳を着けたワンピースの少女と、プロポーション抜群なのにやや男勝りに見えるαの特徴がハッキリ表に出た女子のハグ。
目撃した人間は、この異色のカップルにザワザワしているが皆笑顔だ。
中にはもっと見たかったのか、離れた二人に「もう一回見たい」とコールする声まで聞こえてくる。
学園祭前の余興と思われていないか?
「エー、抱きしめちゃダメェ?
三枝センパイ、海のことキライ?」
「え?
そんなことないし、あと、抱きしめたらあかんとかやなくて、その、抱きしめ方があかんていうか。
えーっと・・・」
シクシク泣き真似まで始めた海に、根が良い三枝は一生懸命言葉を探し始める。
三枝じゃ、海に太刀打ちできないな。
面白がって手を出さない竹居と空は、近寄りもせずにニヤニヤ見ているだけだ。
「空、海を止めて・・」
くれないか、と俺は続ける筈だったんだが。
声を掛けた俺と目が合った途端、空は何故か三枝を上回る勢いで全身を真っ赤に染め、しかも額に汗まで浮かべてパクパクと口を開閉して狼狽える。
ん、なんだその反応は?
俺のこの格好は、さっきも見ていたしなんでそんなふうになるんだ??
「おい、空?」
「あー、ダメダメッ
あの、桜宮センパイ、空の一生のお願いだから、今日は空に近づいちゃダメーーーッ」
両手で顔を覆い、その場に座り込む空。
竹居も唖然。
え、なんだ?
なんでそんなことを俺は言われるんだ?
この直後、校門前の騒ぎに顔をしかめた松野から、さっさと集合しろと呼ばれて有耶無耶になったが。
結局笹部は現れず、それに誰も何も言わず、打ち合わせが終わるまで空は俺から身を隠すように海の背中から出て来なかった。
1
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載


【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。



欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる