ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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29 学園祭

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校門前に俺達三人が到着すると、既に外の塀伝いに一般来校者の長蛇の列が出来ていた。
歩道で広がると他の通行人の邪魔になる。
去年は、役員と警備員で交通整理の対応をしていたんだが、今年は空のクラスが自分達から手を挙げてくれた。

ボランティアというわけではなく、待っている間に、自分達のアプリを説明してダウンロード数を増やしたいらしい。
人気投票の上位に食い込むには、まず利用者を増やさなくちゃ話にならないからな。
一応、教室にもアプリの利用方法を説明したボードが掲示されているようだが、わざわざ中を覗いてくれる人がどれくらいいるかは不明だ。
学園祭の入場申請を待っている間に説明した方が、確実に利用者は伸びる。
うん、見事な作戦だ。
直接校外で何かを売りつける訳じゃないし、学園祭の事前説明もしてくれるからな。
ヤマが許可を出した。

今も、二人一組でQRコードと利用方法を書いた抱えるくらい大きなボードと、学園祭の注意事項を拡大印刷した同じ大きさのボードを掲げ、交通整理しながら説明して回っている。
先頭でその様子を見守っていた空へ、背後から竹居が声を掛けた。


「お、空、順調に増やしてんじゃん!」

「おっ、竹居センパーイ。
結構すんなりダウンロードしてくれる人が多くて、あとはこれから先の情報更新にかかってるかなぁって、感じだよ。
あんまりそっちの手伝い行けなかったけど、バッチリ?」

「あぁ、機材は問題無し。
後は、タイムテーブル通りに行かねぇとこを上手く回してくだけだな」


ハイタッチし合う二人に、海も合流。
今年は三人が生徒会企画を主導しているから、この凸凹トリオも見慣れた。
竹居を挟んで、顔を寄せ合いヒソヒソ話。
元々仲が良かったらしく、ノリも似ているからな。
竹居の広げたファイルを三人で共有しながら、一言二言交わすだけで話が通じていくようだ。
人間関係の構築を避けて通ってきた俺には、羨ましい関係だな。

三枝はその様子を見ながら、校門に着いてから終始落ち着かない様子で視線をチラチラと他へ向けていた。
その先をたどれば、本部テントには誉とヤマがいて。
警備員のリーダーらしき人と松野がその近くで話をしているのが確認出来る。

これから生徒会の打ち合わせなのに、アイツはまだ来てないらしい。
三枝は、ホッとしたのか、落胆したのか。
俺の隣で微かな溜め息を漏らした。

どうせ、また遅刻だろう。
食堂の一件依頼、俺と三枝、と言うか、三枝、だろうな。
笹部は、三枝を避けて避けて、ランチタイムだけじゃなく三枝がいると生徒会室にも入って来なくなったからな。
クラス合同の体育の授業も離れていた。
ヤマは放任しているし、仕事はこなしているようだが・・・こんな状態の三枝を放置したままなんて許せるわけがない。

笹部のあの凍てつくようなフェロモンをまた浴びるのは避けたいが、このままの状態が続いているのも耐えられない。
三枝の横顔を眺めていたら、「ん?」と首を傾げられる。
三枝はきっと怒るだろうが、やはり笹部にネタバラシをするべきじゃないか?
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