ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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29 学園祭

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手が空いたので、ヤマに断りを入れてから体育館に向かった。
出入り口の「只今、関係者以外立入禁止 違反者は出禁」の貼紙効果か、体育館の周囲には人気が無かった。
扉を開けて中に入ると、テープで区切られた観客エリアに三枝が一人で立っていたので走って謝りに行った。


「ごめん、三枝っ
勝手に居なくなって」

「あ、かなちゃんやーん。
全然かまへんで。
俺、あの後校門前の掃除したり、テントの机とか椅子とか運んだらな。
あとはトラブルないか、見て回って来てって言われて。
まだ生徒しかおらんし、αがおらんくても大丈夫やろってホマレンと一緒にデートしててん。
ふふっ、ホマレンと一緒になんて歩けると思ってなかったしな。
めっちゃ楽しかったっ
ついでにな。
空ちゃんのクラスに頼まれて、学園祭アプリの起動確認もしてたんやで。
あれ、めっちゃ便利やわ。
かなちゃん、もうダウンロードした?」


ポケットからスマホを出して、アプリ画面を見せてくれる三枝。
よっぽど誉と見回ったのが嬉しかったらしく、頬が緩んで血色が良い。
体育祭以降、時折沈んだ表情やため息をついたり、瞼が腫れている日もあった。
久しぶりに、心からテンションが上がっている三枝を見れてホッとする。


「いや、まだしてない。
始まる前にしてみるよ」


空のクラスが、展示や出店以外の枠で作ったアプリ「Enjoy high school」は前評判の期待値が高かった。
一日限りのアプリだが、各クラスの展示や出店内容が一覧表で確認できるだけでなく、マップとGPSの連動で、現在地から目的地を検索出来る。
それに、当日クラスメートが体験した内容を書き込んだり、待ち時間の目安を更新していくことでリアルタイムの情報も仕入れることが出来る優れもの。
書き込みをクラスメートに限定したことで、フェイクニュースや人を傷つける内容は掲載されない。

体育祭では順位を落としたようだが、学園長賞は狙えるかもと空は期待していた。
このアプリを作らされたクラスメートは大変だったようだが、学園祭を一日楽しんでいることがそのまま反映されていくので当日の手間はほとんど無い。

目の付け所が流石だなと感心していたんだ。
しかも、ヤマへ相談してからだったが、学園長に直談判して学園祭企画人気投票のアドレスにリンク対応している。

俺も今の内にダウンロードしておこうかと思ったんだが。
突然、観客エリアのライトが落とされ、手元が暗くなった。


「おい、そこのネコとウサギッ
おしゃべりしてないで、ちゃんと聞くことに集中しろっ」


ステージ上から、マイクを握った黒のツナギに赤いキャップの竹居が怒鳴ってくる。


「ごめーん」

「すまない」


出そうとしていたスマホを戻し、ステージに集中。
体育館は、扉や窓だけでなくカーテンも締め切られていて、照明の光しか頼るものがない。
この体育館は、今日一日、吹奏楽部や演劇部の部活発表の他に、竹居が企画したコンテスト枠でバンド演奏やダンス、カラオケにも使われる。
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