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29 学園祭

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自分に静止をかけることが出来る田栗養護教諭の存在が、ヤマを安心させたようだ。
ここでは去年のように暴発することはないと判断して、田栗養護教諭の制しも聞かずに学園祭の間お預けになる分の補充を始めてしまう。

清潔に保たれていたベットに丁寧に下ろされ、薄れていく発情の代わりにヤマの愛情でまるごと密封状態。
先程までの焦がれる激しさは無くなり、甘ったるいシロップにトプンと漬けられたような、心地良過ぎて堕落しそうなくらい意識が朦朧としてくる。

声でもフェロモンでも「好き」「可愛い」「俺のカナ」を繰り返されて、何度もヤマの唇や指先が俺に優しく触れてくる。
額から瞼、頬から唇。
深い愛情が込められた熱に温められていく。
「俺も好き」と伝えたいんだが、言葉になる前に舌で意識ごと絡め取られてしまう。
自分の同意を表すのは、ヤマの首に腕を回しているのがやっとだ。


「お前らなぁ、ここはホテルじゃねぇんだぞ?
いい加減、このフェロモンを抑えろ。
菊川は、さっきよか落ち着いてるだろう」


シャッと、カーテンレールの動く音がしたがすぐに止まった。
田栗養護教諭が、仕切りのカーテンに手を掛けこちらに入ってこようとしたらしい。
保健室を占拠する二人に呆れている声は、いつもより力が抜けている。


「こっちに来んな!」

「だったら、とっとと出ていってくれ。
役員なんだから、山ほど仕事があるだろう?
うちのは、俺も同じ時間にここに来て一度も戻って来ずに働いてるぞ?」

「あるけど、あるけどっ
こんなカナ見てたら・・・あ、ヤバイ。
なぁ、田栗先生。
ここってドライヤーってある?」


田栗養護教諭を威嚇していたヤマの声から、急に険が削ぎ落とされた。
俺の腕を優しく解いて、ぼんやりとベットに座る俺の腰に手を伸ばし、ショートパンツのボタンとジッパーを下ろして尻尾を固定する腰のベルトも外しにかかる。


「んん?」


何をされてるんだろう?
器用なヤマにあっという間に下半身を裸にされても、フェロモン漬けの俺は理解が追いつかない。


「あるぜ。
って、何に使うん・・・あーなるほどなぁ。
まぁ、ここでおっ始めるために来たわけじゃ無いのはわかってたが、後始末はここでするわけねぇ。
そこの洗面台使っていいぜ」

「はー、助かる」


ヤマは、枕の脇に置かれていたタオルで俺の濡れた身体を拭きながらホッと胸を撫で下ろして・・・る?

・・・ん?

段々意識が覚醒していく。
今日は、学校で学園祭の当日だ。
さっきまで校門にいて。
そう、空と三枝もいて。
なのに、ここは保健室。
田栗養護教諭がカーテンの向こう側にいる。
しかも、なんで俺は自分の番に足を持ち上げられ、ドロドロに垂れている蜜の始末をさせてるんだーーーーーっっ

直後、俺の怒号が響いたのは言うまでもない。
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