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29 学園祭
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三枝は、空に。
ヤマと俺は、互いの頬へ。
空が俺とヤマに一枚ずつ渡したことで、自然とキスマークを貼る担当が決まっていた。
これが無いと、写真を自由に撮られてネットにばら撒かれる可能性もあるしな。
先にしゃがんだヤマの頬へ貼り付けると、ヤマは貼られたシールを確かめるように、俺の指の動きをなぞってから俺に向かってニコッと笑った。
・・・その無造作な仕草は、ヤマにとっては無意識なんだろうが。
威力は絶大だ。
べ、別に俺が直接キスをしたわけじゃないんだ。
それなのに、俺が貼ったシールをそんなに大切そうに確かめて、優しく微笑まれたら、照れてしまう。
目のやり場に困って視線を彷徨わせていたら、隣でシールを頬に貼られた三枝が、ヒュッと勢いよく息を吸い過ぎて噎せていた。
空が笑いながらその背中を擦っている。
俺も、うぐぅと喉がつまり、顔が勝手に赤くなるのが自分でもわかった。
「え、カナ、どうかした??」
「ど、どうもしないっ
早く俺も貼ってくれ」
まるで、離れで二人きりのときみたいだ。
ヤマの全部から、俺が大切で大好きで掛け替えのない存在なんだと伝わってくる。
いつもなら、勉強に来ているんだからと抑えてくれていたヤマの気持ちが溢れてきて。
・・・そんなふうにされてしまうと、どうして良いのかわからなくなる。
だって、今日は学園祭なんだ。
「ここは、学校だ。バカッ」と、突っぱねにくい。
はぁ、これが一日続くのか?
俺は、真っ直ぐヤマを見れるだろうか。
さっき教室で、陽太さんに頼まれていたツーショット写真を三枝に撮ってもらったんだが。
確認してもらっても、データは消さずに残して置かなければ。
気持ちを落ち着けてこっそり一人で眺めなおさないと、貴重なツナギ姿のヤマをはっきり記憶に留めることが出来ないかもしれない。
でも、こんなに俺のことを特別だと示してくれて、ずっと側にいたら。
うん、誰もヤマを俺から奪おうなんて考えないよな。
今日はこのままのヤマを受け入れることにしよう。
ギュッと目を閉じ、ヤマがいる方へ顔を向ける。
シールを貼って貰ったら、中庭と体育館にも顔を出して、その後クラスにも顔を出して・・・
気持ちを落ち着けることも兼ねて、これからのことを考えていたら。
「な・・・ひゃんんっ」
身体の内側に溶けた鉄を一気に注がれたような、急速に蕩けて崩れさせる強い発情に乗っ取られ視界がブレる。
堪らず身体を抱え、その場に崩れ落ちた。
視界が、思考が、大きく歪みヤマを受け入れることしか考えられなくなる。
ヤマは、流石にこの場に居ることは危険だと判断したようだ。
ガクガク震える俺を慌てて抱え、その場から全力で走り出した。
なのに、発情は抑えてくれない。
ヤマの身体に触れてしまったことで、肌が粟立ち、吐息に熱が籠もる。
「・・・ヤマぁ」
「うわーっ、ま、ま、待って、カナッ
そんな声で、呼ばないでぇぇーーーっっ」
ヤマの胸に頬を擦り寄せた俺に、ヤマは涙混じりの悲鳴を上げた。
ヤマと俺は、互いの頬へ。
空が俺とヤマに一枚ずつ渡したことで、自然とキスマークを貼る担当が決まっていた。
これが無いと、写真を自由に撮られてネットにばら撒かれる可能性もあるしな。
先にしゃがんだヤマの頬へ貼り付けると、ヤマは貼られたシールを確かめるように、俺の指の動きをなぞってから俺に向かってニコッと笑った。
・・・その無造作な仕草は、ヤマにとっては無意識なんだろうが。
威力は絶大だ。
べ、別に俺が直接キスをしたわけじゃないんだ。
それなのに、俺が貼ったシールをそんなに大切そうに確かめて、優しく微笑まれたら、照れてしまう。
目のやり場に困って視線を彷徨わせていたら、隣でシールを頬に貼られた三枝が、ヒュッと勢いよく息を吸い過ぎて噎せていた。
空が笑いながらその背中を擦っている。
俺も、うぐぅと喉がつまり、顔が勝手に赤くなるのが自分でもわかった。
「え、カナ、どうかした??」
「ど、どうもしないっ
早く俺も貼ってくれ」
まるで、離れで二人きりのときみたいだ。
ヤマの全部から、俺が大切で大好きで掛け替えのない存在なんだと伝わってくる。
いつもなら、勉強に来ているんだからと抑えてくれていたヤマの気持ちが溢れてきて。
・・・そんなふうにされてしまうと、どうして良いのかわからなくなる。
だって、今日は学園祭なんだ。
「ここは、学校だ。バカッ」と、突っぱねにくい。
はぁ、これが一日続くのか?
俺は、真っ直ぐヤマを見れるだろうか。
さっき教室で、陽太さんに頼まれていたツーショット写真を三枝に撮ってもらったんだが。
確認してもらっても、データは消さずに残して置かなければ。
気持ちを落ち着けてこっそり一人で眺めなおさないと、貴重なツナギ姿のヤマをはっきり記憶に留めることが出来ないかもしれない。
でも、こんなに俺のことを特別だと示してくれて、ずっと側にいたら。
うん、誰もヤマを俺から奪おうなんて考えないよな。
今日はこのままのヤマを受け入れることにしよう。
ギュッと目を閉じ、ヤマがいる方へ顔を向ける。
シールを貼って貰ったら、中庭と体育館にも顔を出して、その後クラスにも顔を出して・・・
気持ちを落ち着けることも兼ねて、これからのことを考えていたら。
「な・・・ひゃんんっ」
身体の内側に溶けた鉄を一気に注がれたような、急速に蕩けて崩れさせる強い発情に乗っ取られ視界がブレる。
堪らず身体を抱え、その場に崩れ落ちた。
視界が、思考が、大きく歪みヤマを受け入れることしか考えられなくなる。
ヤマは、流石にこの場に居ることは危険だと判断したようだ。
ガクガク震える俺を慌てて抱え、その場から全力で走り出した。
なのに、発情は抑えてくれない。
ヤマの身体に触れてしまったことで、肌が粟立ち、吐息に熱が籠もる。
「・・・ヤマぁ」
「うわーっ、ま、ま、待って、カナッ
そんな声で、呼ばないでぇぇーーーっっ」
ヤマの胸に頬を擦り寄せた俺に、ヤマは涙混じりの悲鳴を上げた。
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