ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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29 学園祭

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生徒会役員は、学園祭の終了宣言まで着替える暇は無いからな。
俺と三枝の制服を、生徒会室まで運んでから校門まで向かった。
梛木委員長達は、このあとやってくる学園の近所に住むクラスメート達と一緒に調理室で準備をするそうだ。
眼鏡の女子生徒は、命が早く来ないかなぁとソワソワしていたのでその旨を命にメールはしておいた。

校門につくと、私服姿の生徒や教師と一緒に本部テントを設営していた空が待っていた。
流石に7時過ぎたところだから、一般来場者の姿はない。


「あ、着替えてきたんだっ
菊川生徒会チョーと桜宮副生徒会チョーに、噂のアリスワタル~ン」


空がブンブン手を振りながら走ってくる。
こっちに来て良いのか?
手伝って貰っていたんじゃ・・・
折り畳まれていたテントの支柱を持ち上げ伸ばそうとしていた生徒は、空の気ままな性格に慣れているんだろうか。
空の抜けた支柱に、周りで見ていた生徒の一人が諦めた顔で入っていった。

毎年生徒会役員は、制服姿に腕章をつけていたんだが。
ヤマも俺も三枝も、接客担当時間以外も宣伝のため着用して欲しいとクラス全員からお願いされたし。
三枝は、同じクラスの部長権限で本当にバスケ部の応援が免除されるくらいに期待されている。

それなら、ヤマに合わせて色違いのつなぎにしようぜと竹居が手配して、俺と三枝を除くの役員は黒色のつなぎになった。
空は、ズボンの裾を切って膝上のショートにアレンジ。
袖も肘までクルクル巻いている。

ヤマは白色なのに、なんで他のメンバーはその色に揃えているんだろうと竹居に尋ねたら、「本当は制服の藍色が良かったけど、菊川と同じデザインじゃ展開がなくてさ。一応色を近づける努力して黒にしたんだよ」と言われた。
あと、他とヤマが違う方が引き立つだろうと。

全員で集まることなんて、異常事態を除けば朝の挨拶前と最後の終了宣言の時だけだ。
そんな僅かな時間、ヤマを引き立たせる必要があるんだろうか?
逆に、クラスの現代劇に参加する海と誉は、演じる時間だけ制服姿に着替えるらしい。

コスプレや普段着の生徒と紛れないように、役員は「生徒会」と書かれた腕章をつけているんだが。
制服に比べて、話しかけにくそうだな。


「カケルンが、三枝先輩と一緒に歩くの、とぉっっっっっても楽しみにしてたよ~
クラスの準備なんてないのに、こんな朝早くから校舎に入っていったし」

「桂木君、もう来てるんやぁ」


三枝は、空に呑気に返しているが・・・自由時間を桂木と回るのか?
確かに友達だと三枝からは聞いているが、いつ発情期が来るかわからないのにαと回るなんて心配になる。
学園祭が始まる前に、鼻が他のαよりも優れている萩野にフェロモンが出ていないか確認してもらおうか。


「空、どの程度出来た?」

「本部テントはこのとーり。
撮影不許可シールと申請書は、昨日の内に新聞部から追加で貰ってきてるし・・・って、三人にも渡さなくちゃだった!」


ヤマに答えていた空が、つなぎのポケットから赤いキスマークシールを取り出した。
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