ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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29 学園祭

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柴田と三枝のパネルの隣は、芝浦と命の黒ずきんペアだ。
「赤より黒でゴシックロリータっっ」と衣装チームの熱意がこもった命の衣装は、そう言う分野の服らしい。

黒を基調に、黒のリボンや白のフリルで盛り付けられたフード付きのポンチョとシフォン切り替えのサルエルパンツに白のタイツ。
狼の耳を模したカチューシャが見えるようフードが外されているポンチョの下は、レースたっぷりな白ブラウス。
前髪は上がっていて、丸見えになる左目には黒のレースで装飾された眼帯をつけている。
足元は、黒の上げ底ショートブーツ。
だが、これは命の危なっかしい歩き方から前撮りだけにしようと断念された。
今日は黒のスニーカーが用意されている。

確かに、ショートブーツの方が見た目はまとまっていて良いんだが。
芝浦と命は、外回り担当。
命が喫茶フェアリーテイルの案内カードと一緒にクッキーを売り歩き、お客の流れを誘導するんだ。

接客には向かないであろう命を、広告塔として最大限利用する作戦。
体育祭の魔女っ子コスプレで、その威力は折り紙付き。
あれから命はすっかり有名人だ。
ファンクラブを作りたい女子生徒に何度も囲まれ、一生懸命断っていた。

クッキーを入れる籠は、命に持ちやすい小さいサイズ。
一袋に肉球クッキーを5枚100円で販売するんだが、盛っても15袋が限界だ。
クッキーの予備を、会計係も兼ねる芝浦がいくつか持って歩けばいいんじゃないか?と梛木委員長に提案してみたが、何度も教室へ補充に来ることで集客に繋げるハーメルンの笛吹き男作戦なんだと言われた。
あと、15袋毎にカウントしたほうが勘定もしやすいところまで考えているのだと。
学園祭の準備が始まってから、梛木委員長の有能さには驚ろかされてばかりだ。

芝浦は猟師モチーフのボディガード。
黒のスーツ姿に中折れハットを被り、ダンボールで作った猟銃を肩にかけて一緒に歩くらしい。

猟師には、こちらから説明しないと見えそうにないんだが、そこはゴシックロリータの命の隣を歩くバランス重視。
命の可愛さと華奢さが際立つように敢えてシンプルにしているんだとか。

パネルでは、向き合った命の小さな手を片膝を折った芝浦が包み込み見つめ合っている。
これは、連射で撮影した奇跡の一枚。
撮られる側に回った命が緊張して瞬き増加。
この一枚を撮るために、目を閉じてる写真が大量に撮られていた。

壁のポスターの命もぎこち無い。
笑顔が無くて、ガチガチ。
逆にそれを見ている芝浦は笑顔だ。
モデルとして慣れているからと言うより、命のぎこちなさが可愛いと自然に笑っているように見えた。

ポスターは、命を抱き上げたり、手を繋いでジャンプしたり、座った芝浦の間でちょこんと座らせたり、膝の上に乗った命の手を持ち上げ口づけたり。
モデル経験の長い芝浦が、命が引き立つように撮らせ方を上手く調整しているようだった。

先の二組が立っているポーズばかりなのに、この二人には動きがある。

折角だから、命のカメラで撮影しようかと申し出たんだが、命に今は持ち歩いてないからと断られた。
そう言えば、あんなに熱心に芝浦を撮影していたのに、夏休み明けから命がカメラを持っている姿を見かけてない気がする。
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