ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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29 学園祭

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「ごめーん、かな姫、ワタルン、お待たせっっ」

「衣装が昨日までに出来ていたら良かったんだけど、ごめんなさーいっ」

「門のところに笹部ツインズが既にいたよ。
役員の仕事押してるのにごめんねっ」


廊下を走ってやって来た梛木委員長と衣装チームの女子生徒二人。
施錠された教室の前で待っていた俺と三枝は、口々に謝られ「そんなに待っていないから」「全然大丈夫やから」と慌ててしまう。
元々、生徒会役員の俺達が来るのが早すぎるんだ。
待っている間出会った生徒は数人で、廊下も静まり返っているから声がよく響いている。
まだ六時半だしな。
こちらの時間に合わせてもらっているから、申し訳ないのは俺達の方だ。

生徒会室で先に白のつなぎに着替えてボディガードだからと一緒に待ってくれていたヤマは、それより早く開けてほしいと梛木委員長に頼んだ。
これには、すっかりクラスでもワタルン呼びが定着した三枝も大賛成。
もちろん俺も賛成だ。
生徒会の仕事に専念させてもらっていたから、前日準備で完成した内装をまだ見てないんだよな。
廊下側の窓は、ダンボールで完全遮断されていて中が覗けなかった。
前撮りした写真を職員室のA0サイズまで対応した印刷機を使ってポスターにしたらしいが、どんな使われ方をされているんだろう。

梛木委員長が、「ふふふっ」と楽しそうに笑い、担任から借りている教室のカードキーを翳して解除。
他の二人もニコニコ笑いながら、扉を開けてまずは中を見せてくれる。


「うわぁあああ」

「凄いな・・・」

「こ、こんな使われ方を?!」


感動しているのは三枝で、半ば呆れているのがヤマ。
そして、俺は驚いていた。
なんだ、ここは。
昨日まで同じ場所で授業を受けていたとは思えないぞ。

机や椅子の大半が廊下に出ているなと、待っている間に確認出来たからな。
普段よりスッキリしていると思っていたんだ。

が。

視界が煩い。
目のやり場に困るほど、どこもかしこもデコられている。

カフェスペースに複数4人掛けに組まれた机には、俺とヤマ、芝浦と樟葉、柴田と三枝を模したイラストを挟んだシートが貼られ。
壁一面には、俺達6人が前撮りでポーズに苦労した写真が何種類も引き伸ばされている。
何度も何度も撮り直され、おかしなポーズを注文されていたが、こんなに使うことないだろう!
しかも、入り口には等身大のパネルまであるぞっ
疑わしい目をむけた俺に、梛木委員長はドヤ顔で答えてくれた。


「かな姫とワタルンは時間担当だし、みこちゃんは外回り担当だからね。
メイン三組の推しがいなくてガッカリした人のためには必要なのよ」


良い出来でしょうと尋ねられたが・・・こんなものが本当に必要なのか?
俺とヤマのパネルは、衣装姿で手を繋いで歩いている風。
見ているだけで、「楽しそうにっ」「笑顔でっ」と呼びかけられていた声が蘇ってくる。


「最後は記念に持って帰る?」

「折角だから、そうしようかな」


梛木委員長の申し出に乗り気なヤマは、一体これをどこに飾るつもりなんだろうか・・・
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