ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
685 / 911
28 学園祭準備 side 陸

15

しおりを挟む
田栗が、そろそろいーだろうと言い出すまで保健室に軟禁。
コーヒーを飲み干し、海と空から「「兄ぃが最近冷たいっっ」」とここぞとばかりに嘆かれ、学園祭でなにか奢ってやれと田栗にまで言われる無駄話が長かった。
開放されて生徒会室に戻ったら、開口一番、竹居からブゥブゥ文句を言われる。


「笹部、どこに寄り道してたんだよ!
待ちくたびれて、お前抜きで通し練習まで済んだぞ。
まさか、またあの女に連れ込まれたのか?」


あの女って、稲葉のことかよ?
離れて飯を食うことになってから、教室だけじゃなく昼休みまでまとわりついてきてるが。
誘われても一切相手はしてねぇ。
ムカムカして余裕がねぇときに、気ぃ使って抱くとか面倒くせぇ。


「ちげーよ」


そう否定してから、あ"ーーーっと口を押さえた。
そうだった。
かなちゃんが戻ってくる前に巡回終わらせて練習するって話だったわ。
自席に座っていた菊川に、少々草臥れてしまったファイルを渡しに行ったんだが見るからに機嫌が悪い。

基本、温厚で大抵のことは好きにさせてくれんのに、かなちゃんが絡むと性格変わるんだよな。
かなちゃんへのサプライズのための練習をサボるとか、そりゃ不機嫌にもなるか。
うわぁ、この状態で桂木とやりあったことまで言わなきゃなんねぇのかよ。


「わりぃ、菊川。
ちょっと・・・桂木と揉めてさ。
田栗に仲裁されてた」


「桂木と?」


巡回記録を確認していた菊川の顔が上がると、その眉間には皺が寄っていた。
まー、そぉなるよなぁ。
わざわざ筋道通して挨拶に来て、群れへの接触許可を菊川が出してる相手に何やってんだって話だよな。
まさか、格下の桂木が自分から俺に火種を提供するとか考えつかねぇだろうし。
あっちが俺から制裁加えられるようなルール違反を起こしたとか、思いつくならそっちになるよなぁ。

どう説明すりゃいいんだ?

三枝への俺の態度が気に食わねぇって絡まれたってのが事実だが、上位者に食って掛かるには納得できねぇ内容だろう。
同性のβのためにαが上に噛みつくなんざ、αの常識じゃありえねぇ。

俺が言い澱んでいると、俺の顔を黙って見返していた菊川は軽い溜息を一回。
内容を深堀するのは諦めてくれたらしい。


「その件は、どう処理されたんだ?」

「田栗がぼかすってさ。
多少噂は流れるかもしれねぇが、消える」


そう答えると、菊川からファイルを返却された。


「俺は、このあとクラスにカナと前撮りで呼ばれてる。
松野と竹居と通しで合わせとけよ。
時間は指定出来ないけど、一人でこっちに抜けてきたら4人で合わせるぞ」

「了解~」


追求なし、お咎めなしに安堵。
だが、菊川が出ていってからの練習でざっくりとしか覚えてなかったことを松野からちまちまこまけぇとこまで注意されるわ。
合流してきた海と空から、保健室であったことを竹居にチクられるわ。
誉からは、大変ですねとなんか知らねぇが労られるわ。

菊川が戻ってくるのが待ち遠しかったぜ。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...