ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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28 学園祭準備 side 陸

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「三枝先輩のことを考え直す気が無いなら、ハッキリ言葉にして下さいっ
言われた言葉を否定してばかりで、あんたは自分の気持ちを三枝先輩に言ってない。
そんなことだから、三枝先輩は自分がなにかしてしまったのかと責めてばかりで次に行けないんだ」

「あ"ぁ"?!
あわよくば、自分が三枝を手に入れたいだけだろうがっ」


怒りに任せて投げた言葉を、桂木は避けずに真っ向から打ち返してきやがった。


「当たり前でしょうっ
俺は、三枝先輩が好きなんだっっ」


なんなんだ、コイツは。
これまで拳をぶつけてきた相手と全然違う。
俺への激情より、三枝を想う気持ちに駆り立てられたひたむきな熱がフェロモン以上に俺に絡んで鬱陶しい。
俺のフェロモンに太刀打ち出来ない桂木のそれは、「譲らない」「負けたくない」と強がっていても自分の周囲から広げることさえ出来てねぇのに。

あぁ、くそっ
優位に立っているはずなのに、なんでこんなに気持ちがざわつくんだ。

こっちは、慣れねぇ状況でピリピリしてんのに。
海と空は、桂木の背後で赤く染まった顔を両手で覆い「「うひょぉーっ」」と奇天烈な声を上げた。
外野は黙ってろっ
煩わしいと睨みつければ、こそこそと田栗の隣に退避していく。


「開き直りかぁ??」

「自分の気持ちに素直なだけだっ」


睨み合う俺と桂木。
堂々とぶつかってくる桂木に、俺にはぶつけるものが無いことに焦る。
三枝への気持ちなんて二の次で、騙されていたことしか考えていなかった。
それに、単なる群れのβに俺がどんな気持ちを抱くって言うんだ。

出せない答えに、考えることを放棄。
このまま、格付けフェロモンで桂木をねじ伏せ、二度と牙を剥かないよう躾けてやるっ
フェロモンを膨張させようと構えた俺に、待ったがかかる。


「よーしっ、そこまでだ」


田栗は、いつの間にか立ち上がり俺と桂木の間でニヤニヤ笑ってやがった。
はぁ?!
あんだけ放置しといて、ここで止めるのかよ??
っーか、こんだけ俺がフェロモン広げてんのに隠密みてぇに急に現れんな!
緊張状態だった俺の心臓が、田栗の不意打ちにバクバク打ち鳴らし冷や汗まで出てくる。


「桂木は言いたいこと、言えたろ?
笹部は・・・生徒会役員が、学園祭前に騒動起こしたらマズイよな?
さっきのことは、俺がテキトーにぼかしといてやるから、ここで手打ちにしとけよ」


痛いところ、ついてきやがる。
新体制になった生徒会が初めて主催する学園祭。
これは、αの中じゃ内外に菊川の力量が知られる場でもある。
去年はあんな騒ぎで有耶無耶になってるが。
だからこそ、失敗は許されねぇ。
当の菊川は、αとしての評価なんざぁ気にしてないけどな。
群れを支える俺のプライドにかけて、菊川の評価を下げたくねぇ。

俺の凪いだフェロモンに、田栗は満足げ。
一方で、誉が「・・・見れないのですか」と項垂れ海と空が慰めていた。

あ"ーー?!
なーに期待してやがんだ?
αの立会を見世物扱いしてんじゃねぇよっ
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