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28 学園祭準備 side 陸
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「なんでもねぇよ」
その一言で強く押し切る。
深く関わるなと言外に匂わせれば、空は桂木に目を向けた。
俺から聞けないのなら、桂木からと思ったんだろう。
桂木は、空だけじゃなく海からも目を向けられ、何かを飲み込むように一拍置き。
迷いを断ち切るように、マグカップをコトリと机に戻すと、それまで合わなかった俺と目を合わせ穏便に済ませてやろうとしたのにわざわざ掘り起こしてきやがった。
「なんでも、はありますよ、笹部先輩。
もう一度、これまでのことを思い出してから答えを出してください」
・・・ハッ
この場を支配する田栗が居るからか。
やけに強気じゃねぇか。
俺を煽る言葉に、ユラリとフェロモンが身体から漏れて部屋にたなびく。
海と空は、ガタガタ椅子や机にぶつかりながら慌てて立ち上がり「「兄ぃ、落ち着いてっ」」と悲鳴を上げた。
俺の気迫にたじろぐ桂木。
だが、引かない。
机を挟み、俺に向かって剥き出しの感情をぶつけてきた。
「俺からすれば、何故そこまで笹部先輩が誤解しているのかがわからない。
三枝先輩のことを一番わかっているのは笹部先輩でしょう?!」
それが悔しいと、呻く桂木。
海や空は、三枝の名前が出たことで状況を多少は理解出来たらしい。
生徒会で同じ役職なのに距離を不自然にとってるからな。
互いに顔を見合わせ、軽く頷き止めに入ってくる。
「えーっと、カケルン、落ち着きなよ。
兄ぃにとって、なんかそこはヤバ目のツボみたいだからさ」
「そうそう、海ちゃんの言うとおりだよ、カケルン。
二人のことは、二人でなんとかしてくよ、きっと」
桂木を二人がかりで宥めにかかる。
「・・・そんなこと、俺だってわかってるさ。
だけど、こっちが口を出したくなるくらい、笹部先輩は一方的でそのくせ決め手に欠ける。
あれだけ傷付けて、中途半端に放り出して、あんたは何がしたいんだ!!」
怒りに任せ、桂木が机にドンッと拳を叩きつけた。
それまで静観していた田栗が、初めてここで口を出してくる。
「おいおい、備品を壊すなよ~」
止める気はねぇのかよ。
桂木から目を逸らし、田栗に呆れた俺の態度が気に食わなかったんだろう。
桂木は、あからさまにイラッと顔を引きつらせた。
「三枝先輩には悪いけど、拒むならハッキリ拒んでください。
今の状態じゃ、三枝先輩が気に病んでそこから一歩も抜け出せない」
「はぁ?
気に病む?
そんな柄かよ」
心に微塵もねぇことを、さも真実のように口にする面の皮の分厚さは、桂木には全く見抜けねぇようだな。
好きだと言われ、その事実に突き当たったときの俺の気持ちなんざ、お前にわかるわけがねぇ。
その一言で強く押し切る。
深く関わるなと言外に匂わせれば、空は桂木に目を向けた。
俺から聞けないのなら、桂木からと思ったんだろう。
桂木は、空だけじゃなく海からも目を向けられ、何かを飲み込むように一拍置き。
迷いを断ち切るように、マグカップをコトリと机に戻すと、それまで合わなかった俺と目を合わせ穏便に済ませてやろうとしたのにわざわざ掘り起こしてきやがった。
「なんでも、はありますよ、笹部先輩。
もう一度、これまでのことを思い出してから答えを出してください」
・・・ハッ
この場を支配する田栗が居るからか。
やけに強気じゃねぇか。
俺を煽る言葉に、ユラリとフェロモンが身体から漏れて部屋にたなびく。
海と空は、ガタガタ椅子や机にぶつかりながら慌てて立ち上がり「「兄ぃ、落ち着いてっ」」と悲鳴を上げた。
俺の気迫にたじろぐ桂木。
だが、引かない。
机を挟み、俺に向かって剥き出しの感情をぶつけてきた。
「俺からすれば、何故そこまで笹部先輩が誤解しているのかがわからない。
三枝先輩のことを一番わかっているのは笹部先輩でしょう?!」
それが悔しいと、呻く桂木。
海や空は、三枝の名前が出たことで状況を多少は理解出来たらしい。
生徒会で同じ役職なのに距離を不自然にとってるからな。
互いに顔を見合わせ、軽く頷き止めに入ってくる。
「えーっと、カケルン、落ち着きなよ。
兄ぃにとって、なんかそこはヤバ目のツボみたいだからさ」
「そうそう、海ちゃんの言うとおりだよ、カケルン。
二人のことは、二人でなんとかしてくよ、きっと」
桂木を二人がかりで宥めにかかる。
「・・・そんなこと、俺だってわかってるさ。
だけど、こっちが口を出したくなるくらい、笹部先輩は一方的でそのくせ決め手に欠ける。
あれだけ傷付けて、中途半端に放り出して、あんたは何がしたいんだ!!」
怒りに任せ、桂木が机にドンッと拳を叩きつけた。
それまで静観していた田栗が、初めてここで口を出してくる。
「おいおい、備品を壊すなよ~」
止める気はねぇのかよ。
桂木から目を逸らし、田栗に呆れた俺の態度が気に食わなかったんだろう。
桂木は、あからさまにイラッと顔を引きつらせた。
「三枝先輩には悪いけど、拒むならハッキリ拒んでください。
今の状態じゃ、三枝先輩が気に病んでそこから一歩も抜け出せない」
「はぁ?
気に病む?
そんな柄かよ」
心に微塵もねぇことを、さも真実のように口にする面の皮の分厚さは、桂木には全く見抜けねぇようだな。
好きだと言われ、その事実に突き当たったときの俺の気持ちなんざ、お前にわかるわけがねぇ。
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