ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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28 学園祭準備 side 陸

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後ろに倒れながら、受け身を取る余裕はあった。
ついでに、邪魔になるファイルを襲いかかってきた顔目掛けて投げつける。
そのとき、ギチギチ牙を伸ばした桂木の顔が見え、舌打ち。
コイツ、本気で三枝を信じて歯向かおうとしてやがる。
辺りに広がる桂木のフェロモンが「許さない」「三枝先輩を泣かせるな」と俺に挑む。
飛んできたファイルに怯んだ本体より、先に俺をマウントしようと伸びてくるのを格付けフェロモンで迎撃。

本気で相手をしてやろうじゃねぇか。
二度と俺に立ち向かって来ねぇように・・・いや、コイツの呆けた頭を覚ましてやるっ


「見てくれにだまされてんじゃねぇよっ」

「あんたは、さっきから何を言ってるんだっっ」


体勢を立て直す前に、腹に跨がられマウントポジション。
振り上げられた拳を受け止め、払いのける。
それほど強くもねぇだろうと侮っていた手が、拳圧に押されビリビリ震えた。
コイツ、なんかやってやがんのか?
一発が重いじゃねぇかっ

次が来るまでに、両足のバネと腹筋で無理矢理身体を持ち上げる。
俺の上でバランスを崩したガラ空きの桂木の腹に拳を一発。
その勢いのまま床に落として立ち上がる。


「てめぇが見えてねぇから教えてやってんだろうがっ」

「ふざけるなっ
あの三枝先輩が、他人を騙すような人だって言うのか?!」


這いつくばった背中を潰すつもりで上げた足が空を切る。
避けられるとは思わなかったな。
ダメージ軽減してんのかよ。
暫く飯が食ぇねぇくらいに、強かったはずだぜ?
避けられたことに慌てず、逃げた先で立ち上がろうとした足を払って転がす。

傾いた身体にもう一発と、振り上げた拳は背後から抑え込まれて出せなかった。


「あ"ぁ"?」


どこのどいつだ!?

邪魔をしてくる背後の人間が誰かはわからねぇが。
手出し無用の決闘の形は取ってなくても、なんも言わずに乱入してきてただで済むと思うなよ!
振り向きざまに蹴り上げた足は、あっさり薙ぎ払われる。
驚いて反撃に備え構えようとしたが、浮いた身体を勢いよく壁に押さえ付けられる方が圧倒的に早かった。

速攻の制圧。
これには、覚えがある。


「・・・あんたかよ」

「おーお、青春坊主、何してんだ?
さっき、のーんびり世間話してたとこじゃねぇの。
珍しく、牙も出て無いしじゃれてただけか?」


本気の蹴りを、まるで小雨でも払うように相殺してきた田栗は、余裕たっぷり。
立ち上がった桂木に目を向け、戦意を削ぐために格付けフェロモンで一帯を塗りつぶした。
それは、緊迫した周りの空気もぶち壊し、桂木の戦意を消し去るには十分。

クソッ、少しは差が縮まったと思ってたが、経験の差はまだ埋められねぇか。


「桂木、笹部。
大人しく、ついて来いよ?」


田栗は、手を緩め俺の拘束を外すと、さっさと背を向けて歩き出した。
気が付けば、俺と桂木の騒ぎに気付いた一部の生徒が遠巻きながらも集まっていたんだが。


「かいさーん」


田栗が、パンパンと手を叩いて散るように言えばそこに残ろうとする生徒は居なかった。
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